レッスン 1: ジェット機の飛行


ボーイング 737-800 へとステップ アップするには、さまざまな手順を覚え、複雑なシステムの管理方法を身に付けなければなりません。セスナ 172SP とは違うのですから。

ボーイング 737-800 を操縦するには、いくつかの重要な要素、設定、および手順を学習する必要があります。 フライトの計画を正しく立てることは、ジェット機の操縦には欠かせません。このレッスンでは、離陸して、何度かの旋回を伴う簡単なフライトを実施し、制御された降下と着陸に必要な設定を行います。その初めての着陸を終えたら、これまでとは違う自分になっていることでしょう。いえ、カイロプラクティックのお世話になるほど背中が丸まってしまうという意味ではありません。きっと、これ以上ないほどの笑顔で降り立ってくるだろうと言いたいのです。

ボーイング 737-800 について

ボーイング 737-800 の最大離陸重量は 174,200 ポンド (79,010 kg)、全長は 129 フィート 6 インチ、翼幅は 112 フィート 7 インチ、全高は 41 フィート 2 インチです。最大巡航速度はマッハ 0.785 (時速 530 マイル)、最大航続距離は 3,383 マイル、上昇限度は 41,000 フィートで、搭乗可能な乗客数は 162 ~ 189 名です。座席配置は各航空会社が独自に選択するので、利用可能な座席の数は航空会社ごと、および機体ごとに異なります。

ジェット機の基本的な手順

Flight Simulator でのボーイング 737-800 の操縦方法をより深く理解できるように、この航空機に関するさまざまな情報と、各種飛行体勢について確認しておきましょう。ここでいう情報とは、対気速度の設定、各種フライト プロファイル、主要飛行計器の見方などのことです。これらの情報を、フライトの一般的な段階ごとに説明していきます。手っ取り早くボーイング 737-800 を操縦できるようになりたい場合は、クイック スタートを参照してください。

フライト プロファイル

フライト プロファイルとは、対気速度、出力、ピッチ、フラップ位置、および着陸装置を含む航空機の体勢を指します。操縦しているあなたを見て、人物像を割り出そうということではありません。フライトの各段階、つまり離陸、巡航、降下、アプローチ、着陸のそれぞれにおいて、パイロットは特定のプロファイルに従う必要があります。フライトを成功させる鍵は、これらの設定を正しく行うことにあります。フライトの各段階、およびそれぞれのフライト プロファイルとして使用される具体的な設定について、さらに詳しく見ていきましょう。

フライト プロファイルとは

フライト プロファイルとは、フライトの各段階で使用される、事前に決められた体勢のことです。ここでいう「事前に決められた」とは、フライトの特定の段階について、安全に、かつパイロットが制御できるフライトが遂行されるように、各パラメータを航空会社または航空機メーカーが決めている、ということです。フライトの一般的な段階としては、離陸、出発、水平巡航飛行、降下、イニシャル アプローチ、そしてその航空機での利用が認められているさまざまな計器進入 (ILS、VOR、NDB、GPS、CAT III など) などがあります。

プロファイルは、フライトの各ポイントでどのように航空機の体勢を整えて飛行すればよいかをパイロットに示すもので、パイロットはこれを参考に次の段階へ移行します。一般に、実際の速度と重量はプロファイルには記されていません。標準的な操縦手順では、これらの値についてはパフォーマンス チャートを参照するように定められています。速度は、”通常とは異なる” 場合にのみ、プロファイルに記載されます。ここでは、レッスンを楽しんでいただけるように、理解の手助けとなる最小限の情報だけを示します。以下は、ここで取り上げるプロファイルのクイック リファレンス チャートへのリンクです。

これらの各プロファイルをゆっくりと時間をかけて読んだうえで (場合によっては印刷して)、その情報を実際に活用してみてください。この情報の読み取り方に慣れるまでは、シミュレーションのポーズ機能をいくらでも自由に使ってください。注意してほしいのは、ここで示すプロファイルは、Flight Simulator のボーイング 737-800 について理解し、楽しく操縦できるように単純化されてまとめられているということです。これらのプロファイルには、すべての問題やパフォーマンス パラメータが記載されているわけではありません。また、特定の航空会社やメーカーから発表されている手順を示すものでもありません。ここでは、まず楽しんでください。ここで学習することが、いつか旅客機を操縦するときにきっと役に立つことでしょう。

離陸

  • 離陸重量を計算する
  • 離陸に備えてフラップを設定する
  • 離陸時の各種速度を決定する
  • フラップを上げるタイミング (または速度) を決定する

巡航

  • 巡航飛行の最終的な高度と対気速度を選択する
    (トラフィック パターンまたはフライト ルート)

降下 (ATP のレッスン 2 で詳しく説明します)

  • 着陸に備えて降下を開始するタイミングを計算する
  • 着陸重量を確認する
  • 着陸に備えてフラップ設定を選択する
  • 着陸に備えて “Vref (バグ) 速度” を決定する

アプローチ

  • 速度の管理
  • 飛行体勢の管理

着陸

  • 飛行体勢を変更する
  • ILS または視認進入のパターンを飛行する
  • センターライン上に滑らかに着陸する
  • 航空機を停止させる

離陸

離陸重量について理解する

ボーイング 737-800 を操縦するための主要なデータの 1 つは、その重量です。航空機の重量はフライトのさまざまな段階に必要で、たとえば離陸時や着陸時の対気速度や、フラップを上げ下げする速度を決定するときにも使用します。ジェット機は、エアウェイを飛行しながら、燃料を消費しています。燃料を燃焼させるほど、ジェット機は軽くなっていきます。ここで大切なのは、フライトの始まりから終わりに進むにしたがい、機体の重量はだんだん軽くなっていくということです。

重量に関しては、”離陸重量” と “着陸重量” を知っておく必要があります。それぞれの重量と、外気温および密度高度を考慮して、離陸および着陸における適切な対気速度を決定します。難しそうですか? そうかもしれませんね。けれども、ここでは単純化して考えるために、Flight Simulator の 737-800 用の標準設定と共に、いくつかの前提条件を使うことにしましょう。

737-800 の重量に関する制限

最大タキシング重量174,700 ポンド (79,243 kg)
最大離陸重量174,200 ポンド (79,016 kg)
最大着陸重量146,300 ポンド (66,361 kg)
最大乾燥重量138,300 ポンド (62,732 kg)

Flight Simulator の標準の 737-800 の重量

最大離陸重量174,200 ポンド (79,016 kg)
最大積載燃料46,063 ポンド (20,894 kg)
最大乾燥重量138,300 ポンド (62,732 kg)

最大タキシング重量が、最大離陸重量よりも大きいことがわかりますね。これは、空港内をタキシングしたり、先に並んでいる航空機の後ろで離陸の順番待ちをしたりする間に、燃焼する燃料の分が考慮されているためです。

また、最大着陸重量が最大離陸重量よりも小さいことにも注意してください。これは、離陸後すぐに着陸することはできないということを意味しています。機体が重すぎるので、着陸するには少し遠回りしてから戻るように計画しなければなりません。

乾燥重量とは、全手荷物および全乗客を乗せ、ただし燃料は一滴も積載していない状態での機体の重量を指します。乾燥重量を知っておくことが重要なのは、いつでも機体の実際の重量を計算できるようにするためです。乾燥重量に現在の燃料の重量を加えれば、機体の実際の重量がわかります。

燃料搭載量は、Flight Simulator で簡単に調べることができる値の 1 つです。ボーイング 737-800 には、左、右、および中央の 3 つの燃料タンクがあります。

Flight Simulator でのボーイング 737-800 の標準燃料搭載量

右翼8,630 lb4,876 kg(1,288 ガロン)
中央28,803 lb16,273 kg(4,299 ガロン)
左翼8,630 lb4,876 kg(1,288 ガロン)
合計46,063 ポンド26,025 kg(6,875 ガロン)

これらの数値から、燃料の総重量は 46,063 ポンド (20,894 kg) となります。私たちの航空機の乾燥重量を計算してみましょう (後で基準値として使用します)。最大離陸重量 (174,200 ポンド) から燃料重量を引くと、答えは 128,137 ポンド (58,122 kg) となります。

数値を単純化する

計算が苦手な人は、これらの数値を次のように単純化してもかまいません。

  1. 先ほど説明した方法で、現在の燃料重量を調べます。
  2. 100,000 ポンド (45,455 kg) を加算します。

現在の燃料重量を計算する

現在の燃料重量を計算するには、Altキーを押してメイン メニューを表示し、[航空機] メニューの [燃料とペイロード] をクリックします。

離陸時のフラップ設定

民間旅客機は、重量、滑走路の長さ、気温、密度高度、および地表の状態に基づいて、さまざまなフラップ設定を離陸時に使用します。 離陸時に最適なフラップ設定を求めるプロセスは複雑です (航空会社がパイロットを多めに雇うのは、この計算をさせるためかもしれません)。しかし、ここでは話を簡単にするために、離陸時のフラップ設定は 5度の位置を Flight Simulator での標準の設定として使用することにしましょう。

離陸速度の管理

離陸時の各種速度を決定する

速度の管理は、ボーイング 737-800 の操縦に欠かすことのできない作業です。離陸時と着陸時の速度を正確に計算するプロセスは複雑になることもあり、そのとき使用するものとしてはルックアップ テーブルと呼ばれる条件一覧、航空機の体勢、重量、気温、密度高度などがありますが、これらはほんの一例です。レッスンでは、説明を単純にするために、機外の状況は “標準大気” の曲線に従うものと仮定します。

V 速度

離陸時に最も注意すべき 3 種類の対気速度とは、V1、Vr、および V2 です。この 3 種類の速度をまとめて “V 速度” と呼びます。正しい V 速度を選択する際に大切なのは、機体重量、機外の状況、および離陸時のフラップ設定です。 Flight Simulator でのボーイング 737-800 の標準重量、”標準的な” 気象条件、そしてフラップの位置は 5 度までという条件を仮定すれば、一連の速度を簡単に決定することができます。

標準大気

標準大気の状態とは、海水面での気温が 15℃で、高度が 1,000 フィート上がるたびに 2℃ずつ気温が下がる状態です。

V1 は “離陸決定速度” です。安全に離陸するには、機体の離陸重量、気温、および密度高度に基づいた一定の長さの滑走路が必要となります。離陸に向けて出力を全開にした後のあるタイミングで、パイロットは離陸を中止するか、続行するかを決断しなければなりません。ボーイング 737 では、このタイミングは対気速度によって判断され、V1 と呼ばれます。V1 に到達する前の離陸滑走中に、出力を止めて、ブレーキをいっぱいにかけ、滑走路終端に達する前に安全に停止できる能力がパイロットには要求されます。 V1 を超えて加速した後は、必ず航空機を空中に浮き上がらせなければなりません。先ほど設定した条件を基にこのレッスンでの V1 速度を計算すると、150 ノットになります。

V1 は “離陸決定速度” です。安全に離陸するには、機体の離陸重量、気温、および密度高度に基づいた一定の長さの滑走路が必要となります。離陸に向けて出力を全開にした後のあるタイミングで、パイロットは離陸を中止するか、続行するかを決断しなければなりません。ボーイング 737 では、このタイミングは対気速度によって判断され、V1 と呼ばれます。V1 に到達する前の離陸滑走中に、出力を止めて、ブレーキをいっぱいにかけ、滑走路終端に達する前に安全に停止できる能力がパイロットには要求されます。この速度に達したら、エレベータをゆっくりと引き、適切なピッチ (+20 度) になるまで機首を上げ、離昇します。 レッスンでは、指示対気速度 154 ノットを Vr 速度として使用します。ボーイング 737-800 について考慮すべきことの 1 つに、引き起こしのときにピッチを上げすぎると、機体の尾部が滑走路にこする可能性があります。尾部をぶつけないようにするには、1 秒あたり 3 度を超えないペースで 20 度まで機首を上げるようにします。

図 1-1: 離陸時の機首上げ直後

V2 は “安全離陸速度” です。仮に V1 の直後にエンジンの 1 つが故障しても、出力は十分に上がっているので、必要な上昇率で地表から十分に離れて、離陸を完了できます。離陸時に使用できるフラップ設定にはさまざまなものがあるので、すべてのフラップ設定に共通する最低運動飛行速度以上を確保するために、V2 に 15 ノットを加えた対気速度をエンジン 2 基での上昇速度として使用します。

離陸滑走中にクルーの声を聞く機会があったとしたら、副操縦士が次のように読み上げているのが聞こえるでしょう。

“80 ノット”(システムをクロスチェックし、すべてが安全範囲内であることを確認)
“V1”(引き返し限界点を通過、離陸を続行)
“ローテート”(ここで浮き上がる)
“ポジティブ レート”(VSI と対気速度計がどちらも確実に上昇していることを示す)
“ギア アップ”(機長が、副操縦士に着陸装置の格納を指示)
“1,000 フィート”(フラップ格納高度)

出力設定

ここまでは、機体の重量および周囲の状況との関係で決定する、離陸時に必要な速度について見てきました。では、新たな目標速度に達するように加速または減速するには、どのように出力を設定すればよいのでしょうか。

図 1-2: エンジン計器

タービン エンジンのジェット機では、ピストン エンジン機とは異なり、出力を一定の rpm (1 分あたりの回転数) で表すことはできません。タービン エンジンの出力は、最大回転数に対する比率として表します。この最大回転数とは、そのエンジンの定格出力です。ボーイング 737-800 のパイロットにとって重要な測定値は、低圧タービン シャフトの回転数 (N1) と、高圧タービン シャフトの回転数 (N2) の 2 つです。

N1 は、エンジンの低圧タービン シャフトの最大回転数に対する比率です。N1 は、エンジン出力との相関関係が最も高い値です。この値は、目標対気速度を調節するために、パイロットがスロットルを動かして設定します。

N2 は、エンジンの高圧タービン シャフトの最大回転数に対する比率です。この値は、タービンのコンプレッサーのブレード先端の速度を表します。出力を発生させるときは、いかなる場合も、高圧コンプレッサーのファンの速度が設計上の最大回転数の制限を超えないようにする必要があります。N2 を監視して、この制限を超えないようにします。

このレッスンでは N1 に注目し、N1 のパーセント値で出力を設定します。

離陸の方法

重量、フラップ、および目標速度については確認できたので、滑走路に向かい、離陸する準備は整いました。出発滑走路のセンターラインに機体を合わせたところからフライトを始める場合も、ゲートから始める場合も、無線の周波数を合わせ、航法機器を調整し、自動操縦装置を事前に設定し、チェックリストの項目を確認して、フラップ位置を 5 度に設定してから、滑走路の指定と離陸許可を ATC から受けます。

Flight Simulator の標準設定を使用するためのヒント

離陸重量174,200 ポンド (79,016 kg)
フラップ5 に設定
離陸出力N1 の 95%
速度V1VrV2V2 +15
150 ノット154 ノット162 ノット177 ノット
上昇出力N1 の 90%

滑走路までどのように移動したかにかかわらず、すべての調整を済ませ、離陸時に行うことの計画を頭に入れておくとよいでしょう。一般の航空会社のフライトでは、IFR クリアランスの一部である出発手順を担当するクルーがいます。Flight Simulator では、この手順はかなり簡略化されているので、出力を上げて、滑走を開始すればよいのです。ストレート アウトで離陸するときは、必ず従うべき基本的な手順があります。たとえば、3,000 フィート以下では対気速度が 200 ノットを超えないようにし、3,000 ~ 10,000 フィートでは 250 ノットを超えないようにする、といったものです。

必要に応じて、クイック リファレンス テーブルを確認 (場合によっては印刷) してください。離陸

対気速度の制限

空域に定められている規則に従うためには、速度に関するいくつかの制限が重要になります。実際、そのいくつかは、いずれ定期運送用操縦士 (ATP) のチェックライドを受けるときにテストされます。クラス B の空港から離陸する場合、高度 10,000 フィート以下では対気速度が 250 ノットを超えてはなりません。クラス C またはクラス D の空港の場合は、空港の空域内 (通常は空港から 4 マイル以内で 2,500 フィートまで) では対気速度 200 ノット以下、その後 10,000 フィートに到達するまでは 250 ノット以下でなければなりません。これらの制限を見れば、ここまで詳細に記述された手順が離陸時に必要な理由がわかるでしょう。空域の定義の詳細については、「用語集」および「ATC (航空交通管制)」の記事を参照してください。

クリアード フォー テイクオフ

航空機の設定がすべて終わり、離陸の許可を受けたら、ブレーキをかけた状態で、出力設定が 40 ~ 50% になるようにスロットルを開きます。これは、”スロットルの立ち上げ” と呼ばれることもある操作で、2 つのことを目的に行われます。 1 つは、この間にパイロットがエンジン計器をスキャンして、すべてが正常に機能していることを確認することです。もう 1 つは、ここで停止して計器をスキャンしている間に、エンジンをオーバーヒートさせたり、ブレーキに過剰な負荷をかけることなく、エンジンを中程度の出力まで動作させることです。両方のエンジン出力が等しくなり、すべてが問題なく安全な状態にあることを確認したら、ブレーキを解除して、離陸出力である N1 の 95% に設定します。 セスナ 172SP やビーチクラフト バロン 58 に比べて、スロットル操作に対する反応が敏感であることに気付くでしょう。スロットルをいきなり全開にするのではなく、3/4 の位置まで開いてから、N1 の 95% までゆっくりと開いてください。または、スロットルを一度全開にしてから、95% まで戻すようにします。

Vr – ローテート

次にパイロットがやらなければならないことは、滑走路のセンターライン上を加速しつつ、速度を監視することです。最初に確認するのは V1、つまり離陸するか否かを決定する速度です。すべてのシステムが正常に機能しているかどうかを判断してください。正常ならば、続行です。 Vr、つまり引き起こし速度を次に確認します。154 ノットに達したら、エレベータをゆっくりと引いて浮き上がります。1 秒間に約 3 度のペースで機首を上げ、20 度までピッチを上げます。単純に計算すれば、20 度の機首上げ姿勢になるまでに、だいたい 6.5 秒から 7 秒かかるはずです。

図 1-4: 離陸時の機首上げ直後の計器パネル
図 1-5: 図 1-4 の状態をスポット撮影機から見たところ

ポジティブ レート – ギア アップ

翼を水平に保った状態で 20 度まで機首を上げながら、昇降計と高度計をスキャンします。 両方の計器が上昇傾向を示していれば (針が目的の方向に動いていれば)、”上昇率がプラス” の状態であり、着陸装置を上げても問題ありません。上昇率が安定しない状況で、着陸装置を上げるようなことはしません。まだ地表からそれほど離れていないので、不意に滑走路に戻される可能性もあるからです。その理由はウィンド シアや、加速が不十分な状態での引き起こし、大きすぎるピッチ姿勢などですが、ほかにもいろいろ考えられます。着陸装置を上げるには、G キーを押すか、ジョイスティックの割り当てられているボタンを押します。

フラップを上げる

出発の初期段階では、航空会社は初期プロファイルに従うことで、地表および障害物から確実に距離を取り、十分な上昇性能を実現して、万一のエンジン故障に備えます。これと同様の手順に従い、レッスンではフラップ位置は 5 度に設定したまま、速度 180 ノットを維持して対地高度 400 フィートまで上昇します。20 度まで機首を上げる際は、このことに注意してください。出発の初期プロファイルにおける次の重要な要素は、適度な上昇率と対気速度で安全な高度 (対地高度 1,000 フィート) まで上昇することです。ここまで到達すれば、離陸後のプロセスを開始しても問題ありません。

1,000 フィート AGL に到達したら、通常離陸プロファイルにあるように、スケジュールに従ってフラップを上げます。1,000 フィート AGL に到達するまでは、V2 +15 (162 +15) 以上の速度で上昇します。スケジュールによれば、ここからフラップを上げ始めて問題ありません。 まず、フラップ位置を 5 から 1 にするため、F6 キーを 2 回押します。上昇出力を N1 の 90% に設定し、15 度の機首上げ姿勢まで機首を下げ、加速します。2,500 フィート AGL に達したら、機首を 10 ~ 12 度に下げ、250 ノットまで加速します。加速して 200 ノットを超えるころまでに、フラップを完全に上げてください。ここで、離陸後のチェックリストの項目を確認するのもよいでしょう。

図 1-6: フラップを格納し、12 度の機首上げ姿勢にした後の計器パネル

巡航

離陸後上昇から巡航高度まで

10 ~ 12 度の機首上げ姿勢、速度 250 ノット、N1 の 90% の出力設定を維持したまま、高度 10,000 フィートまで上昇します。ここで、機首を 6 度まで下げ、280 ~ 300 ノットまで加速します。上昇して高度が上がるにつれて、空気の密度が低くなるため、性能も変化します。出力設定が N1 の 90% に保たれているかを監視し、必要に応じて調節して、90% を維持します。さらに上昇する場合は、上昇速度 280 ノットを維持するために、ピッチを 5 ~ 6 度まで下げなければならない場合もあります。

目的の巡航高度まで 1,000 フィートの高度に達したら、機首を下げ、毎分 1,500 フィート (fpm) の上昇率を維持します。巡航高度まで 150 フィートを切ったら水平飛行に移ります。機首を下げて 2 度の機首上げ姿勢にし、同時に出力を下げて N1 の 70 ~ 72% にします。ここで自動操縦装置をオンにして、針路 (航路)、高度、および対気速度を維持できますが、短距離のフライトならば、私はやはりボーイング 737-800 は手動で操縦したいですね。長距離フライトであれば、自動操縦の便利さは副操縦士さえをも上回ります。もっとも、コーヒーをいれてくれることはありませんがね。

フライト レベル (FL)

高度が 18,000 フィートを超えると、”フライト レベル” に入ります。フライト レベルは、高度の数値から末尾のゼロを 2 つ取り除き、その前に “FL” を付けて表します。つまり、”FL180″ は 18,000 フィートのフライト レベルということになります。FL180 を超えたら、忘れずに高度計を 29.92 インチに再設定してください。レッスンでは標準気圧を想定しているため、調整は行いません。ただし、ATC は、高度計に対するこの調整をパイロットが行ったものと見なすため、調整を行わないと、指定された高度から逸脱することになります。 高度計を調整するには、マウスを使って高度計の規正ノブ (BARO) を回します。

降下

空中に浮き上がり、巡航高度で水平飛行に移るまでに必要な、基本となるポイントをここまで説明しました。次に問題になるのは、着陸に備えてどのように降下し、正しい位置に、正しい速度と高度で到達するかということです。降下については「レッスン 2 降下とエネルギー管理」で詳しく取り上げますが、このジェット機の操作を学ぶレッスンで必要なことを、ここで簡単に説明します。

降下を開始する時期が来たら、正しいタイミングで正しい位置に航空機を到達させるために、いくつかの重要な作業を行う必要があります。降下を始める前に、クルーは次のことをすべて行わなければなりません。

  • 降下を開始するタイミングを計画する
  • ATIS、およびアプローチと着陸に関連するその他の情報を入手する
  • 予想される機体の着陸重量を計算する
  • 着陸時のフラップ設定と Vref 速度を決定する
  • 着陸する滑走路、およびそこまでのアプローチを決定する
  • クルーに対し、アプローチの具体的な内容に関するブリーフィングを行う
  • 降下のチェックリストの確認を完了する

速すぎるとはどれぐらいの速さか

速度の制御は、注意を要する問題です。 パラメータで指定された範囲内に速度を維持するために、プロファイルを変更しなければならないタイミングが 2 つあります。1 つは降下するときで、空気の密度がしだいに高くなっていきます。もう 1 つは水平飛行に移行するとき、つまり、指定された速度制限 (たとえば 250 ノットへの減速) を守るために減速を開始するときです。

降下するにつれ空気密度がだんだん高くなっていくと、指示対気速度の単位が音速に対する比率 (マッハ) から、1 時間あたりの海里数 (ノット) に戻ります。この境目は、対気速度計の左上に表示される赤と白の縞模様の針 (理髪店の看板に似ているので “バーバー ポール”とも呼ばれます) によってわかります。この針は、その航空機の “超過禁止速度” を表しています。降下中は、対気速度計の針が徐々に上がってバーバー ポールに近づき、最終的に重なります。こうなると、”カチカチ、カタカタ” という警告音が鳴り、速度超過状態であることがわかります。そのような状態から回復するには、N1 を 45% まで下げ、降下が完了するまでは 310 ~ 320 ノットを維持してください。

図 1-7: 対気速度計と “バーバー ポール”

巡航高度から降下するとき、速度が 300 ノットを大きく上回っていると、運動エネルギーが蓄積していきます。これは、目標地点に到達して速度を落とさなければならないあなたにとって、全面的に不利に働きます。修正するのは簡単です。いえ、窓から手を出すよう乗客に指示しなさいとは言いません。降下計画を立てる際に、5 海里分の余裕をとって水平飛行に移り、アイドルで目標速度まで減速するようにします (ジェット機では、スロットルをいっぱいに引いてアイドルにしても、バロン 58 と違ってエンジンの過冷却を起こす心配はありません)。つまり、約 300 ノットで降下しますが、10,000 フィートに達したとき、またはその前に水平飛行に移ります。出力をアイドルまで下げ、慣性で 5 海里分飛行する間に 250 ノットまで徐々に減速するのです。250 ノットになったら、スロットルを開いて N1 の 52 ~ 55% まで上げ、速度 250 ノットを維持します。

最後の手段として、スポイラー (スピード ブレーキ) もいつでも使用できます。/ (スラッシュ) キーでオンとオフを切り替えます。綿密な計画を立て、万全な状態でアプローチと着陸をプロファイルどおりに飛行できるようにしてください。

高度計を必ず再設定する

FL180 (18,000 フィート) 以下に降下するときは、高度計を 29.92 インチから現地気圧設定に再設定しなければなりません。

アプローチの計画

ATIS

目的地の空港の ATIS (飛行場情報放送業務) から取得すべき重要な項目は、現地の気象状況、現地の高度計規正値 (FL 180 以下に降下するときに高度計に設定する値です)、使用滑走路、および空港施設の使用制限や滑走路または誘導路の閉鎖状況などです。これらの情報を基に、アプローチの準備を整えます。

着陸重量

降下計画は、通常は目的地の 100 ~ 120 マイル手前、着陸の約 20 ~ 25 分前までに立てます。 着陸重量を推計するには、Alt キーを押してから A キーを押し、続いて F キーを押して現在の燃料重量を調べます。現在の高度が 25,000 フィート以上ならば、降下を完了し、アプローチして着陸するまでに 1,700 ポンドの燃料が燃焼されると考えればよいでしょう。したがって、現在の重量から 1,700 ポンドを引きます。次に、この数値に 100,000 ポンドを加えると、予想される着陸重量となります。

着陸時のフラップ

着陸時のフラップ設定を選択する際は、滑走路の長さ、アプローチの特性、滑走路の状況、現在の気象概況、燃料効率といったさまざまな問題を考慮する必要があります。 レッスンの方針である “単純化” に従って、着陸時のフラップの位置は常に 30 度としましょう。

着陸時の Vref 速度

アプローチの開始から着陸までは、徐々に対気速度を下げていきますが、現在の飛行体勢に対する最低対気速度を下回らないようにしなければなりません。アプローチと着陸で注意しなければならないのは、フラップ設定と機体重量に応じた適切な対気速度を維持することです。速度が遅すぎると機体を制御するのが難しくなり、最悪の場合は失速して、予定よりも早く地上に着いてしまいます。離陸時と同じように、対気速度があらかじめ決められているので、これに従えば最高の飛行性能が発揮でき、失速などの不測の事態を防ぐことができます。制御された飛行とそうでない飛行の境目となる対気速度を “Vref” と呼びます。

安全性とより高い性能を保つため、この基準速度にさらに 5 ノットを加えます。よって、航空機の着陸重量と着陸時のフラップ設定を基に Vref 速度を決定したら、ファイナル アプローチの着陸速度は、Vref より 5 ノット速い速度になります。強い横風がある場合や、ウィンド シアが予想される場合は、Vref +5 にさらに 10 ノットを加える場合もあります。そろそろ、セスナ 172SP を操縦している方がいいかな、なんて思い始めていませんか。そう思ったとしても、誰も責めたりしません。簡単ではありませんが、これがジェット機の操縦というものなのです。

では、この計算はいつ行えばよいでしょうか。降下計画段階で、フライトクルーは着陸重量を計算し、フラップ設定を選択します。着陸重量とフラップ設定が決まれば、適切な Vref 速度を求めることができます。

ヒント

  • 常に Flight Simulator での標準重量を使用します。
  • Vref 速度は 145 ノットを使用します。
  • 着陸時はフラップ 30 度で 150 ノットを維持します。

アプローチのブリーフィング

目的地の空港の気象状況、現地の高度計規正値、着陸予定の滑走路がわかったので、ここで、アプローチに備えて情報の整理を始めましょう。このとき、指定されたアプローチのチャートを再確認します。

この時点では、無線の周波数を合わせてインバウンド コースに乗ることはまずありません。それは、アプローチ チェックリストを確認する段階になったら行います。ただし、標準の到着手順か、ATC が巡航高度からの降下を誘導している場合は管制官が出す指示に従う必要があります。

アプローチ

降下計画と速度管理の基本についてはすでに説明しましたね。それでは、いよいよ空港環境へと移ります。ILS アプローチの飛行については ATP レッスン 3 で詳しく取り上げますが、ここでは、滑走路までの飛行方法の概要を説明します。Flight Simulator の ATC 機能を使用して飛行している場合は、ファイナル アプローチ コース上にレーダーで “誘導” してもらう (どの針路に飛行するかを指示してもらう) ことになります。誘導を受けずに飛行する場合は、正しく設定されたファイナル アプローチ コースを正確にインターセプトするために、特定の高度、速度、および針路で飛行するように計画を立てる必要があります。

このアプローチへの移行については、経験上、空港から 10 海里の高度 3,000 フィート AGL の地点から、航空機の体勢を正しく取り、ローカライザまたは VASI に従って飛行するように計画を立てるとよいでしょう。この 10 海里の地点に近づく間に 170 ノット以下に減速し、フラップを 5 に設定します。グライド スロープ指示器が動き始めたら、着陸装置を下げ、フラップの位置を 15 度まで下げ、160 ノットに減速します。3,000 フィート AGL であと 10 海里の地点ならば、まだグライド スロープに乗ってはいなくても、インターセプトできる十分な距離のはずです。距離と高度がこれに近い位置であれば、3 度の降下経路でファイナル アプローチを飛行できることを覚えておいてください。ファイナル アプローチ フィックス (FAF) で、着陸に備えてフラップを 30 に設定し、出力を N1 の 53 ~ 55% に設定して、スムーズに着陸できるようにグライド スロープに沿って降下します。

必要に応じて、アプローチのクイック リファレンス テーブルを確認 (場合によっては印刷) してください。ストレートイン視認進入

着陸

航空機がローカライザに沿って飛行しており、グライド スロープ指示器が動き始めたら、着陸装置を下げ、フラップの位置を 15 度に設定し、目標速度である 160 ノット (正確には、機体重量に応じた適切な Vref 速度) まで減速して体勢を整えます。これで、グライド スロープをインターセプトして滑走路に向かって降下する準備ができました。グライド スロープの指針が中央から 1 つ上の目盛りを指したら、着陸時の最終的なフラップ設定である 30 度に設定し、出力を N1 の 53% に設定します。0 度への機首下げを開始し、ローカライザを基準とした機体の水平方向の位置と、グライド スロープを基準とした垂直方向の位置を監視してください。

図 1-8: 着陸アプローチ時のコックピットからの視界

図 1-9: 図 1-8 の状態をスポット撮影機から見たところ

ファイナル フレアと着陸

滑走路の進入端を越えたら、出力を下げてアイドル状態にし、ピッチを 3 度までゆっくりと上げます。これを、”フレア” と呼びます。 このピッチ設定を維持して、対気速度を徐々に下げると、滑走路上に降りることができます。フレアの間も微調整を続け、機体がセンターラインから外れないようにします。そして、高度を徐々に下げて滑走路に降ります。滑走路のセンターラインと、計器パネル上段中央の “GPS” という文字とを揃えることを忘れないでください。こうすれば、センターラインに合わせて着地できます。気持ちはわかりますが、コックピットのすぐ先の地面を見つめるのではありません。視線は、滑走路の終端に移します。主輪が着地したら、前輪をゆっくりと下げてください。逆噴射をかけ (F2 キーを押し続けます)、ブレーキをかけて (ピリオド (.) キーを押します) 減速し、次の滑走路交差点で滑走路から出ます。着地後に機体を停止させるために、オートブレーキ機能を利用してもよいでしょう。

図 1-10: ファイナル フレア時のコックピットからの視界
図 1-11: 図 1-10 の状態をスポット撮影機から見たところ

説明は以上です。これであなたも機長ですね。少なくとも、その地位に近づいたといえるでしょう。多くのことを学びましたが、学ぶことはまだまだあります。ここで説明したことを十分に理解するには、何度か復習しなければならないでしょう。心配はいりません。私はいつでも待っています。納得のいくまで、レッスンを繰り返してください。学ぶ過程を楽しむことが、一番大事なのですから。

必要に応じて、アプローチと着陸のクイック リファレンス テーブルを確認 (場合によっては印刷) してください。トラフィック パターンでの着陸ILS アプローチで着陸する方法

定期運送用操縦士 (ATP) レッスンのヒント

  • フラップ、速度、および出力はすべて Flight Simulator の “標準大気” 状態 (海面での気温 15℃) での標準設定です。航空機の重量は変動し、気温も変化するので、これらの要素を調整しなければならないことがあります。そうした理由から、ボーイング 737-800 の操縦については、具体的な数値ではなく、一定の範囲で示すようにしています。
  • タービン エンジンは、出力を上げたり下げたりしたら、すぐ反応することを忘れないでください。先々のことを考え、事前に計画を立てておいてください。速度が下がっていると気付いたときには、遅すぎます。速度が下がっていると気づいたら、すぐに出力を上げてください。
  • N1 を 2 ~ 5% 変化させただけでも大きくな影響が現れますが、この感覚はすぐにつかめるでしょう。
  • ピッチの場合は、2 度変えただけでも著しい影響が現れます。
  • 水平飛行時のピッチは、5 ~ 6 度の機首上げ姿勢にします (高度 10,000 フィート以下の場合)。
  • 飛行体勢 (出力、フラップ、または着陸装置) の設定を変更するたびに、必ずトリムを調整してください。目的の状態に出力やピッチを設定したら、操縦装置から手を離しても水平直線飛行ができなければなりません。
  • ファイナル アプローチでは、滑走路のセンターラインとパネル上部の NAV/GPS スイッチを揃えるようにします。進入端を越えるときは、センターラインと GPS の文字を揃えるようにします。
  • ピッチと出力を正しく設定したら、慌てずにじっと待ちます。重い、タービン エンジンのジェット機ですから、そうすぐには反応してくれません。
  • 自動操縦装置を使用しても、もちろんかまいません。ただし、自動操縦装置を使用する場合は、操作方法を十分に習得しておく必要があります。

では、コックピットでお会いしましょう。今学習したことを練習するには、[このレッスンを開始する] をクリックしてください。

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