空港のトラフィック パターン


空港の標準的な出発と到着の手順

『Cleared for Takeoff』 (copyright 1998、King Schools, Inc.) からの抜粋

空港の到着と出発の手順は標準化されていますが、これは、高速道路の出入り口が決められているのと同じ理由からです。 標準化されたトラフィック パターン手順を守ることで、航空機の交通の秩序が保たれ、より安全に飛行できるようになります。もしも空港ごとに個別の離着陸の手順が行われたら、遠くから来たパイロットはどうしたらいいのか戸惑ってしまうでしょう。空港のトラフィック パターンは独創性を発揮する場所ではありません。パイロットはいろいろな技術を持っていますが、千里眼は持ち合わせていません。標準の手順を使用していれば、すべてのパイロットが、トラフィック パターンを飛行している他の航空機の行動を予測できます。

ほとんどの空港では、パイロットは一般に標準のトラフィック パターンを飛行します。このパターンは、空中に浮かぶ長方形と考えてください。長辺の 1 つが、使用中の滑走路と重なります。使用中の滑走路とは、実際に交通に使用されている滑走路を指し、通常は風向きに最も近い向きの滑走路が選ばれます。ほとんどの事故が空港の近くで起きるというのは事実です。したがって、適切な手順に従い、他機に十分目を配ることが必要です。

ダウンウィンド レグ

ダウンウィンド レグは、滑走路と平行な区間で、滑走路との距離は 0.5 ~ 1 マイルです。この区間は、滑走路を離着陸する航空機とは逆の方向に飛行します。

ベース レグ

ダウンウィンド レグを飛行中に、着陸地点が後方約 45°に見えたら、ベース レグに向かって旋回します。ベース レグでは、滑走路に他の航空機がいないことと、衝突するおそれのある航空機 (たとえばストレート イン アプローチを行う航空機や、標準以外のトラフィック パターンを飛行している航空機) がいないことを確認します。

ファイナル アプローチ

飛行機が着陸に向けて進入する、滑走路と重なる区間をファイナル アプローチ (ファイナル) と呼びます。ベース レグからファイナル アプローチへの旋回を終えると、機体の位置は滑走路中心線の延長線上にあるはずです。このとき、滑走路末端までの距離が 1/4 マイル以上あれば、着陸そのものの態勢を整える時間は十分にあります。

アップウィンド レグ

着陸前に滑走路を観察するには、どうすればよいかを考えてみましょう。その場合は、滑走路と平行に、着陸するときと同じ方向に飛行しますが、パターンからは少し横にずれた位置を飛行します。この部分がアップウィンド レグで、ここを飛行すれば滑走路全体を見下ろすことができます。何らかの理由で着陸進入を中止し、”ゴー アラウンド” または “着陸中止” を行うときは、滑走路から横にずれてアップウィンド レグを飛行します。

テイクオフ クライム

滑走路から離陸する飛行機のことを “出発” するといい、出発する飛行機はテイクオフ クライムを飛行します。

クロスウィンド レグ

テイクオフ クライムとダウンウィンド レグの間の短い飛行区間がクロスウィンド レグです。

旋回の方向

標準は左旋回

一般に、トラフィック パターンでは左旋回が使用されます。これは、操縦席が左右に配置されている飛行機では通常パイロットは左側の操縦席を使用するので、左のほうが機外の視界が良好であるためです。したがって、左回りパターンが標準となっています。

右回りパターンが採用される場合

住宅地などがあり、左回りのトラフィック パターンが好ましくない、あるいは安全ではないと考えられる場合に、右回りのパターンが使用されることがあります。右回りパターンは、形状は左回りパターンと同じですが、パターンを飛行するときに左旋回ではなく右旋回を行います。

トラフィック パターンが標準かどうかを知るには

空港/施設の一覧

非標準トラフィック パターンについて調べるには、空港/施設の一覧または他の空港ガイドを参照します。この空港情報には、右回りトラフィック パターンを使用する滑走路が明記されています。

UNICOM

UNICOM がある空港では、UNICOM のオペレータに問い合わせれば、右回りトラフィック パターンを使用する滑走路かどうかがわかります。

トラフィック パターン標識

空港上空の、トラフィック パターン高度よりも高い位置を飛行しながら、トラフィック パターン標識を見るという方法もあります。トラフィック パターン標識は、一般に、空港のよく目立つ場所に設置されており、点線で描かれた円が使用されています。 トラフィック パターン標識の中央は滑走路を表し、両方の “足” は、ベース レグからファイナル アプローチへの旋回の種類を図形として表しています。

点線で描かれた円の中にあるトラフィック パターン標識は滑走路 27 と 9 を表しています。滑走路 27 に着陸するときは、ベース レグからファイナル アプローチに向かうときに左旋回を行います。つまり、滑走路 27 を使用する場合は標準の左回りトラフィック パターンとなります。一方、滑走路 9 に着陸するときは、ベース レグからファイナル アプローチに向かうときに右旋回を行います。つまり、この滑走路を使用する場合は非標準の右回りトラフィック パターンとなります。

トラフィック パターンへの進入と離脱

トラフィック パターン高度

トラフィック パターンに進入するときの推奨高度は、空港標高から 1,000 フィート上です。ただし、空港または滑走路に対する別の高度が定められている場合は、それに従います。非標準のトラフィック パターン高度については、空港/施設の一覧で調べるか、正しいパターン高度を無線で確認します。 トラフィック パターン高度まで降下する間に、安全確認のための小さな旋回 (クリアリング ターン) を何度か行い、自機の下および前方に他の航空機がいないことを確認します。トラフィック パターンに進入する前に、余裕をもってパターン高度での水平飛行に移ります。降下しながらパターンに進入すると、他機からの視認が困難となるうえに、降下した結果、他の航空機に衝突する危険性も高くなります。

トラフィック パターンへの進入

トラフィック パターンに進入するには、滑走路の長さのほぼ中央の地点で、ダウンウィンド レグに対して 45°の角度で進入するようにします。滑走路上の着陸地点に正しく着陸するには、正しい角度でパターンに向かって飛行し、ほぼ中央の位置でパターンに合流します。パターンに進入する角度は 45°が最適です。この角度なら、ダウンウィンド レグを飛行している航空機がよく見え、何度も旋回せずにパターンに合流できます。

空港からの出発

離陸後、そのままトラフィック パターンを飛行するときは、滑走路離陸端を通過後、パターン高度との差が 300 フィート以内のときにクロスウィンド レグへの旋回を開始します。このようにすれば、クロスウィンド レグからダウンウィンド レグへの旋回が終了したときにはパターン高度に到達しています。また、トラフィック パターンに進入してくる他の航空機からも、こちらを視認しやすくなります。 空港から出発するときは、テイクオフ クライムの延長線上をまっすぐ飛行するか、45°旋回してクロスウィンド レグに向かいます。

特殊な出発手順

空港によっては、騒音軽減や障害物迂回のために特殊な出発手順が定められていることがあります。 そのような手順は、飛行情報掲示板に掲示されますが、ランナップ エリアの近くに標識として掲げられていることもあります。特殊な出発手順が定められているときは、必ずそれに従ってください。単に要求されているからではなく、そうすることは他の航空機に対するマナーであり、航空にかかわるすべての人の安全のためでもあるからです。

関連リンク

交通量の設定
航空交通管制について
空港の ATC オペレーション
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