昔ながらの航法


GPS 以前の地上目標物、地図、速度計算、コンパスを頼りに飛行する方法

航法技術の基礎

現代の最新式航法装置は、天候や風や視程が最悪の状態であっても、地表から数マイルの高さを高速で飛行する航空機を目的地まで正確に導くことができます。かつてのパイロットたちが、コンパスや、高度計、ストップウォッチ、対気速度計などの基本的な計器だけを使用し、地上の目標物を目で確認しながら飛行していたことを考えると、これは驚くべき進化といえます。

もちろん、そのほかにも必要とされる技能がありました。かつてのパイロットの中には、複葉機のワイヤがうなる音の高低を聞き分けて、だいたいの対気速度を判断できた者もいたといわれています。エンジン速度は、エンジンのごう音を聞いて計っていました。飛行中は、両翼の下に見える河川や線路をたどっていました。つまり、昔のパイロットにとっては、現実の世界そのものが最も役に立つ航法装置だったのです。

航法技術の基本に関していえば、人類が空を飛ぶようになって 100 年たっても、そう大きく変化してはいません。現在の航法技術は、初期のパイロットが使用していた航法技術の多くをその基礎としており、このような技術は、Flight Simulator でも学習して練習し、技に磨きをかけることができます。

ここでは基本的な航法技術を 1 つずつ説明していきますが、実際のパイロットがどれか 1 つの技術だけで飛行することはほとんどないということを覚えておいてください。ほとんどのパイロットは、ここで紹介する 4 つの基本技術のすべてを駆使して、飛行機を出発地から目的地まで操縦します。もちろん、現代のパイロットは、これらの基本技術を補うために無線航法や GPS も使用します。

人類が空を飛ぶようになってしばらくの間は、空中における航法 (ナビゲーション) を “アビゲーション (avigation)” と呼び、それに従事する人 (つまりパイロット) のことを “アビゲータ (avigator)” と呼んでいました。当時の航空について書かれた書籍では、アビゲーションのことは次のように要約されています。

「アビゲーションの目的とは、地表を基準とした自機の位置、そしてその位置から目的地までの方位と距離をいつでも必要なときにアビゲータが判断できるようにすることである」

P. V. H. ウィームズ著『Air Navigation』 (McGraw-Hill, New York, 1931) より

ここでの重要なポイントは “いつでも必要なときに” ということです。航空機を操縦しているとき、パイロットは “常に” 地上の目標物、コンパス、地図、時計、対気速度計、および対地速度計を見ていなければなりません。航法 (ナビゲーション) とは飛行前の作業だけを指すのではなく、飛行中にも積極的に行われるものなのです。そして、休みなく行うべき作業です。

地文航法 : 地上の目標物をたどる

Flight Simulator でも現実の世界でも、針路を確認するには、窓の外に目をやり、地上に見えるものと航空図とを比べて、自分の位置を修正するという方法が最もわかりやすいでしょう。このプロセスを “地文航法” といいます。地文航法とは、ある地点から別の地点まで飛行するために、道路、鉄道線路、河川、湖、山、海岸線など、地上の目印となるものをたどっていくことです。複雑なプロセスではありません。

飛行機と自動車は同時期に発展してきました。全国各地で道路の建設が始まり、やがて幹線道路が整備されていったので、パイロットは自分が知っている道路をたどりながら空を飛んでいました。鉄道線路もすでに多くの地域で敷設されていたので、これもパイロットのお気に入りとなり、かつてのパイロットたちは線路のことを “鉄のコンパス” と呼んでいたほどでした。晴れた日であれば、地面がそのままその土地の案内図となり、パイロットは、空を飛ぶときでなければ気にも留めないような小さな池や樹木を目印としてファイナル アプローチのコースを決め、グライド スロープの角度を計算していました。これは、今日でも同じです。

航空図を読み取る

地文航法と航空図を読み取る技術は、切り離して考えることはできません。航空図を読み取って針路を決めるコツは、図の記号が何を表すかを知り、現実の世界のどれに対応するかを理解することです。

かつては、航空図が読めなくてもパイロットになることはできました。実際、航空図などというものは存在せず、ステーション マネージャやパイロットたちが編集した飛行指示書があるだけでしたが、これは目に付きやすい目標物から別の目標物までを飛行するための基本的な飛行方法を記述したものにすぎず、つまりは地文航法用の手引書でした。当時の飛行指示には、たとえば、”滑走路を離陸したら、眼下に見える鉄道線路をたどり、川と大きな赤い納屋が常に左側に見えるように飛行します。次に、1 本の大きな常緑樹に向かって飛行します。その先には小さな町があり、2 本の道路の交差点に白く塗られた鉄道停車場があります” などと記述されていました。

詳細な航空図が登場するまで、パイロットが飛行中に使用していたものは道路地図でした。1940 年代から 1950 年代にかけての、パイパー カブが誕生した時代になっても、パイロットは公式の航空図と同じぐらい道路地図を当てにしていました。道路は地面の上にはっきりと見えるので、パイロットにとっても見つけやすい存在だったからです。

それでも、1920 年代には航空図が普及するようになっていました。パイロットの中には、航空図を板に貼り付け、いつでも参照できるようにひもで足に固定していた者もいました。この習慣から生まれた “ニー (ひざ) ボード” という言葉は、今日でも、パイロットが飛行中に航空図やチェックリストを容易に確認できるようにするための装置の名前として使われています。Flight Simulator にもニーボードがあり、フライトのブリーフィング情報、キー操作、航空機のチェックリスト、速度などをいつでも参照することができます。フライト中にニーボードの表示と非表示を切り替えるには、Shift + F10 キーを押します。

かつての郵便輸送機や旅客機で使われていた航空図は、何枚もの地図を貼り合わせて航路全体が長い 1 枚の地図になるようにしていました。この航空路の “ストリップ マップ” の縮尺は、現在の区分航空図と同じ 500,000 分の 1 (1 インチあたり約 8 マイル) で、地上目標物、ビーコン、コンパス針路、空港などが、パイロットにわかりやすいようにはっきりと記載されていました。

今日の航空図にはさまざまな情報が記載されており、空港、航法援助施設、航路、地形の特徴、幹線道路、鉄道線路などが各種記号によって記されています。繰り返しになりますが、地文航法を行うために航空図を読み取るときに重要なことは、地図記号の読み方を覚え、現実の世界ではどれに対応するかを特定する方法を練習することです。

地文航法を成功させるためのヒント

  • はっきりと目立ち、見つけやすい目標物を選びます。
  • 最低でも 2 つの目標物を同時に追ってください。
  • 各種の目標物を上空から視認できるように練習します。かつてのパイロットたちは、鉄道線路、道路、市街地、河川、湖、山など、目的地までの針路の手掛かりとなる目標物を見つけ、それをたどって飛行していました。
  • 常に 2 本の道路の間を、あるいは常に川が左側に見えるように飛行します。このようにすれば、地上の目標物を探す範囲を狭めることができます。
  • コース上に、2 本の道路が交差する位置や、河川にかかる橋、高い山などのチェックポイントを設けます。このようなはっきりとした目標物があれば、飛行しているコースが正しいことを確認できます。
  • 飛行する高度が高ければ高いほど、遠くまで見通すことができます。高高度を飛行していれば、地平線の向こうから視界に入ってくる次の目標物を認識しやすくなります。
  • コンパスが示すコースをたどっている場合は、その方位に機首を向け、地上の目標物を利用して現在位置を確認します。
  • 地図上の目標物と実際に見える目標物の比較を練習します。ただし、地図上で目立っているものが、実際の地上でも目立つとは限りません。

推測航法 : 速度、時間、距離の方程式をマスターする

航空図を読み取りながら地文航法で飛行するのは比較的簡単で楽しい作業ですが、視程が低くなったときは、次の目標物どころか、現在の目標物がまったく見えなくなることさえあります。雲の上や、海の上を飛ぶこともあるでしょうし、次の目標物がはるか彼方ということもあるでしょう。このようなときに、”推測航法” と呼ばれる方法が役立ちます。

1930 年代初めに商業航空の時代が到来すると、2 地点間を最も効率よく最短時間で飛行するには、カーブの多い道路や蛇行する川に沿って飛ぶのではなく、直線上を飛行するのだということにパイロットたちは気付くようになりました。陸軍航空隊の大尉で、『Avigation』 (McGraw-Hill, 1931) の著者でもあるハービー H. ホランドは、次のように要約しています。

“鉄道線路、幹線道路、河川をたどって飛行することは、直線移動できるという航空路の利点を享受できず、自らが関与する科学技術の最も重要な段階における自身の無知をさらしているようなものである。”

推測航法は、言葉の響きほど難しいことではありません。推測航法は英語で dead reckoning といいますが、dead (死) とは何の関係もなく、実際にはコース針路を地図上に描き、経過時間を計算することによって飛行距離を導き出し、現在位置を推測する手法のことをいいます。英語では、”ded reckoning” または “de’d reckoning” と綴ることもありますが、ここからわかるように、この言葉の由来は “deduced reckoning” (推測による算定) です。”reckoning” とは “計算” を単に言い換えたものであり、つまり、推測航法とは、対気速度、コース、針路、風向き、風速、対地速度、および経過時間に基づいた計算によって、現在位置を推測するプロセスを指します。基本的には、対地速度と飛行している針路がわかっていれば、現在位置と、一定時間経過後の位置を計算によって求めることができます。ここで主に使用する計器は、時計とコンパスの 2 つです。

対地速度の計算

対地速度とは、地面を基準とした航空機の速度のことをいい、方程式 D/T = S で求めることができます。推測航法で重要なのは、対気速度ではなく対地速度ですが、これは飛行してきた経路をプロットするときは地面を基準とするからです。風がない場合は、飛行機の対気速度が 100 ノットならば、対地速度も 100 ノットとなりますが、飛行機が対気速度 100 ノットで飛行しているときに 25 ノットの向かい風がある場合は、対地速度は 75 ノットとなります。逆に、対気速度 100 ノットで飛行しているときに 25 ノットの追い風がある場合は、対地速度は 125 ノットになります。

向かい風や追い風以外の風が吹いているときは、計算はさらに複雑になります。推測航法を使用して対地速度を簡単に計算するには、出発地から既知の地上目標物までの飛行時間と距離を記録しておきます。その目標物に到達したら、D/T=S の式を使用して速度を計算します。実際に移動した地表上の距離と、そこに到達するまでにかかった時間から求めた値なので、これが対地速度となります。対地速度と対気速度 (対気速度計が示す値です) を比較すれば、風向きに関係なく、対地速度への風の影響を知ることができます。

推測航法のポイント

  • 離陸した地点と時刻を正確に記録し、時間の計測を開始します。時間の計測を始めるのは、離陸 5 分前などではなく、実際に離陸したときです。このことを守らないと、計算によって正確な値を得ることはできません。
  • コンパス針路を維持します。
  • 定期的に推測航法を使用して現在位置を確認します。地文航法と航空図読み取りの技術を使用して、飛行経路上の地上目標物の位置を確認します。目立つ目標物に到達するたびに、推測航法の方程式を使って、距離、経過時間、および対地速度を記録するとよいでしょう。これによって、飛行経路への風の影響を知ることができ、また現在位置を定期的に確認することができます。

推測航法の使用例

離陸後、無風状態で直線コースを時速 100 マイルで 3 時間飛行したとします。推測航法を使用して航空機の位置を特定するには、次の単純な方程式を使用します。

Speed (対地速度) x Time (既知の地点からの経過時間) = Distance (同じ既知の地点からの距離)

または、

ST = D

注意 : この 3 つの変数のうち、2 つがわかっていれば、残りの 1 つを計算によって求めることができます。たとえば飛行時間を求めるときの数式は、D/S = T となります。対地速度を求めたいのであれば、数式は D/T = S となります。

したがって、この推測航法の例の計算式は次のようになります。

100 mph x 3 時間 = 300 マイル

推測航法の方程式による計算を繰り返すことによって、航空機のコースと既知の地点からの距離を記録していくことができます。時間と速度の計測は、既知の地点から開始することが大切です。出発した地点を正しく認識していなければ、その後の計算で正しい結果を得ることはできません。

コンパスを使用した航法 : 針路を見失わないために

磁気コンパス

コンパス針路どおりに飛行することは、推測航法だけでなく、すべての航法技術において欠かせないことです。実際に、コンパスは最も古くから使用されている航法装置の 1 つです。

磁気コンパスは地球の磁場に反応し、コンパスの針の N 極は磁場に引き寄せられて常に北を指します。これを “磁北” といいます。かつての航空機のほとんどにはコンパスしかありませんでしたが、現代の航空機はコンパスと定針儀 (ディレクショナル ジャイロ) の両方を装備しています。定針儀は、コンパスよりも使い方は簡単ですが、正確な方向を指すようにするには常にコンパスに合わせて調整する必要があります。

コンパス針路とは

コンパス針路は、磁北を基準とした航空機の機首の向きを示します。

磁差

磁差 (磁気偏差) とは、真の北極 (地球の回転軸) と磁北極 (地球の磁力線が 1 点に集まる場所) との差のことです。つまり、地球上の多くの場所では、真の北を示す経度線と磁北を指す磁力線の向きは揃いません。コンパスが示す磁北と真北との差のことを磁差といいます。

コンパスを読み取る

航空機のコンパスでは、針はコンパス カードに取り付けられています。コンパス カードは度を単位として方位を示すもので、線と数字、および N (北)、S (南)、E (東)、W (西) の文字が刻まれています。コンパス カードの 1 周は 360°で、90°ごとに東西南北の印があり、N (北) は、コンパスの 0°と 360°の両方 (1 周の開始と終了) を表します。東は 90°、南は 180°、西は 270°です。

コンパス針路を調べる

コンパスの窓の前面にある垂直な基線の下に見えるのが、航空機のコンパス針路です。たとえば、磁北に向かって飛行している場合は、N という文字がこの基線のすぐ下に見えます。

コンパス針路に向けて旋回する

北に向かって飛行している場合は、東は右側、西は左側、南は後方となります。しかし、航空機のコンパスでは、東寄りの針路を示す印は北の左側にあり、西寄りの針路を示す印は北の右側にあります。

理由は簡単です。コンパス カードの N の文字は、実際にはカードの南側に書かれているためです。コンパスを見て確認してみてください。東、西、南についても同様で、文字の刻印は、実際の方位とは反対側にあります。したがって、あるコンパス針路に旋回するときは、そのコンパス針路の印とは反対方向に航空機を旋回させる必要があります。注意 : 動くのは航空機であって、コンパスではありません。たとえば、磁北に向かっていた航空機を旋回して磁東方向に向ける場合は、東を示す文字はコンパスの左側にありますが、航空機を旋回させる方向は右です。E という文字が基線の下に来れば、コース変更は完了です。

旋回時のコンパス誤差

旋回時のコンパス誤差は、地球の磁場が長楕円形をしており、磁力線が地球の両極で地表に向かっているために発生します。このことは、コンパスに次のような影響を与えます。

  • 北方向への旋回時の誤差 : 針路を北から変えたとき、または北を通って変えたときは、コンパスは最初に逆方向への旋回を示し、その後、航空機の真針路より遅れた針路を示します。
  • 南方向への旋回時の誤差 : 針路を南から変えたとき、または南を通って変えたときは、コンパスは航空機の真針路より進んだ針路を示します。
  • 航空機の向きが東または西に近づくにつれて、コンパスの誤差は小さくなっていきます。真東 (90°) または真西 (270°) を通って旋回したときは、コンパス誤差が生じることはありません。

旋回後、安定した水平直線飛行状態になると、コンパスは実際の磁針路を指し示すようになります。旋回誤差が発生するのは旋回中のみです。磁気コンパスが最も正確に方位を示すのは、水平直線飛行のときです。

注意 : 南半球におけるコンパス誤差は、北半球でのコンパス誤差とは正反対になります。

加速時と減速時の誤差

東方向または西方向に飛行しているときに加速または減速すると、コンパス誤差が生じます。加速したときは、コンパスは真針路よりも北寄りの針路を指し示します。減速したときは、真針路よりも南寄りの針路を指し示します。このことは、ANDS という略語で覚えるとよいでしょう。Accelerate (加速) は North (北)、Decelerate (減速) は South (南) です。

加速時や減速時の誤差はなぜ生じるのでしょうか。航空機の速度が変化すると、コンパス カードが傾くので、地球の磁場に対するコンパスの補正ができなくなります。コンパスの針の N 側の端は地球の磁場と同じ向きを指そうとしますが、コンパス カードが傾くと、正しい方位を示すことができません。この誤差が発生するのは、加速または減速したときのみです。一定の速度で飛行していれば、このような誤差が生じることはありません。

定針儀 (ディレクショナル ジャイロ、DG)

磁気コンパスを使うときはこのような頭の体操を繰り返さなければならないので、定針儀 (ディレクショナル ジャイロ、DG) のほうが使い方はずっと簡単だと感じるでしょう。磁気コンパスとは異なり、定針儀は機体の旋回をそのまま反映します。実際の世界で右側にある針路は、定針儀でも右側にあります。旋回するときは、定針儀の中の飛行機の機首が目的の針路を指し示すまで旋回するだけでよいのです。ただし、定針儀があらかじめ磁気コンパスに合わせて調整されていることが前提です。定針儀は、ジャイロスコープ (回転儀) のしくみを応用した装置で、磁気を利用するものではありません。つまり、地球の磁場に反応するものではないのです。ただし、定針儀では “ジャイロの摂動” と呼ばれる誤差が生じることがあるので、飛行前に磁気コンパスの方位に合わせて定針儀を設定し、飛行中も定期的にコンパスに合わせて再設定することによって、定針儀と磁気コンパスを常に同期させる必要があります。

風による偏流の補正

推測航法の方程式では、風による偏流は考慮していませんでした。現実の世界のパイロットは、機械式または電子式の計算機によって、風による偏流を補正した針路を計算します。また、かつての進歩的パイロットの多くは、表を使用していました。ただし、ここでは風の補正をあまり難しく考えないことにしましょう。風による偏流を補正するには、単に風の吹く方向に機首を向けます。川を泳いでまっすぐ渡るには、わずかに上流に向かって斜めに進むのと同じことです。このほかに、地文航法の技術を使って眼下の目標物を確認することも忘れないでください。

風向きと風速の表示と非表示を切り替えるには、Shift + Z キーを押します。

特定のコンパス針路に機首を向けて飛行することを、”特定のコースを飛行する” といいます。ただし、飛行中の航空機は風によって押し流されるので、コンパス針路が地表上の実際の航路 (軌跡) を示しているとは限りません。たとえば、地上のある地点から真東にある別の地点まで飛行したいときに、風が北から吹いている場合は、風による偏流を補正するために、機首をわずかに風上の方に (わずかに北の方に) 向ける必要があります。この結果、地表上の航跡は真東に向かっていても、コンパス針路は北東寄りの方向を示すことになります。

横風の影響でコースを外れているかどうかを知る簡単な方法は次のとおりです。

  1. コース上に位置する目標物を 2 つ選び、コンパス針路を維持して第 1 の目標物から第 2 の目標物まで飛行します。
  2. 第 2 の目標物の真上に到達しなかった場合は、横風があることと、その向きがわかります。
  3. ゆっくりと、風の吹く方向に機体を向け (数度の旋回)、コース上の別の 2 つの目標物を選んで前の手順を繰り返します。今度は、第 2 の目標物にまっすぐ飛行できるように機首の向きをわずかに調整します。
  4. 1 回目のコンパス針路と 2 回目のコンパス針路の差が、風の影響を補正するために必要な角度です。

常にすべての航法技術を駆使する

航空術の極意は、飛行しているときは常に、できる限り多くの航法技術を使用することにあります。使用する航法技術が 1 つ増えれば、それだけ自機の位置をより正確に把握できるようになり、目的地までのコースを確実に飛行できるようになります。チャールズ リンドバーグは、周到な航法技術を編み出したことで知られています。視線を、地図から眼下の目標物、次に計器パネル、そして再び地図へというように動かしていました。推測航法も常に行っていました。常に地図と両翼の下に広がる景色を見比べていたといいます。

視程が良好で、地表や目標物がよく見渡せるときでも、すべての技術を使うように心がけましょう。そうすれば、推測航法の技能が向上し、第二の天性とまで呼べるようになります。それは良いことです。なぜなら天候ほど予測が困難なものはないからです。

Flight Simulator で使用できるその他の航法

地文航法、推測航法、およびコンパスを使用する方法は、航法技術の基礎を成すものですが、Flight Simulator では、このほかに無線航法 (VOR) や GPS などの航法などを使用できます。他の航法の詳細については、「航法」のセクションを参照してください。

航法技術についてさらに学習する

航法技術については、数多くの書籍が出版されています。ここで取り上げてきた航法のポイントについてさらに詳しく学習するには、ロッド マチャド氏の著書『Private Pilot Handbook』、およびキング スクールの『Cleared for Takeoff』をお読みください。

Flight Simulator で昔ながらの航法を使用するためのヒント

  • コックピットのパネルを非表示にして地上を見渡せるようにするには、W キーを押します。W キーを押すと、コックピットのパネル、ポップアップ表示された計器類、計器なしの表示の 3 つが順番に切り替わります。この機能を利用すれば、地上の目標物を発見しやすくなります。
  • 航空機の表示ウィンドウを順番に切り替えて、航空機やその周囲を別の視点から見るには、S キーを押します。
  • 遠くの目標物を見るには、^ (キャレット) キーを押します。まず、パネルの上に見えている景色の部分をクリックします。ズーム インするには、^ (キャレット) キーを押します。ズーム アウトしてより広い範囲を見るには、 (マイナス) キーを押します。ズームの倍率は、画面の右上に表示されます。このとき、前方の景色が双眼鏡で眺めたときのように大きく、または小さく見えるだけで、航空機の位置が変わるわけではないことに注意してください。ズーム アウトすると、その地点の景色全体を見通すことができるので、道路、鉄道線路、河川のように遠くまで続く目標物をたどるときにも便利です。標準倍率に戻すには、BackSpace キーを押します。

関連リンク

GPS の使用法
航空図
表示ウィンドウとウィンドウの使用法