訓練ツールとしての Flight Simulator
このトピックを読まれているのは、おそらく Flight Simulator をひととおり習得された方でしょう。セスナ スカイホーク 172SP を操縦して、世界中のさまざまな景色を楽しんできたはずです。
あなたは、訓練操縦士か計器飛行証明の取得に取り組んでいる自家用操縦士かもしれないし、技能を維持したい IFR パイロットかもしれません。あるいは、訓練操縦士への新たな指導法を模索しているインストラクターかもしれません。いずれにしろ、あなたには真剣にバーチャル飛行を学ぶという心構えがすでにできているわけです。しかし、Flight Simulator を使った操縦訓練が、はたして本物の飛行機を操縦する際に役立つのでしょうか。端的にお答えしましょう。”十分役に立つ” と言えます。
Flight Simulator には、マルチプレイヤーでの航空機共有、マルチプレイヤー管制塔、強化されたフライト分析機能などの、さまざまな機能が用意されており、優れた訓練ツールとして利用できます。任意のフライトを再生して、水平方向および垂直方向の飛行経路を見ることができます。さらに重要な機能として、インストラクターがインターネットまたは LAN (ローカル エリア ネットワーク) を介して他の Flight Simulator パイロットのフライトを監視し、指示を出したり、気象を変更したり、航空機の故障をシミュレーションすることもできます。
ただし、どのようなツールにも言えることですが、Flight Simulator の場合も、上手に使いこなして初めて便利なものになります。ここでは、Flight Simulator の各機能を使用して、効果的な訓練ツールとして利用するためのヒントを紹介していきます。ただしその前に、まずはこのゲームの背景について簡単に説明しておきましょう。
目次
知的なゲーム
新人パイロットや現役を引退したパイロットが直面する困難のほとんどは、基本的な身体能力の欠如ではなく、むしろ習得しようとしている課題の背後にある原理や手順への誤解から生じます。曲技飛行のコンテストで優勝を狙うのでもない限り、フライトにおいて身体能力はそれほど重要なものではありません。
しかしその一方で、コックピットに座る前に、そこでなすべきことを理解していなければ、ホールディング パターン進入の教科書に従って規定のトラフィック パターンを飛行したり、円滑なアプローチを行ったり、管制官に好印象を与えたりすることはできません。そこで登場するのが Flight Simulator です。訓練操縦士にとっても、計器飛行証明の取得に励んでいるパイロット資格保有者にとっても、また現役であり続けたい IFR のベテラン パイロットにとっても、Flight Simulator は優れた訓練ツールであり、習熟ツールなのです。
また、インストラクターにとっては、Flight Simulator は地上教育の補助教材として、生徒の習熟度を試すことのできる優れたツールです。さまざまな書籍やビデオ、参考書などが入手可能な昨今、生徒たちはインストラクターがよく出す引っ掛け問題に対し、正解をオウム返しのようにやすやすと受け売りで答えることもできるでしょう。
しかし、Flight Simulator を操作させ、VOR 航法のような複雑な課題が含まれている実習をさせてみると、生徒が実際の問題に理論を適用できるかどうかをリアルタイムに判定できるのです。こうして、実際に飛行機に乗り込む前に、生徒が学習したスキルを練習し、その理解度をインストラクターが把握できるという利点は非常に重要です。
Flight Simulator を利用した訓練プログラム
Flight Simulator を訓練または習熟プログラムの一環として使用するメリットは、これだけではありません。課題を切り分け、複雑な手順を扱いやすい大きさに細かく分割できることも重要な利点です。
インストラクターも生徒も特定の課題やコンセプトのみに集中することが可能です。空中で演習飛行を開始し、特定のスキルを練習して、それを何度でも繰り返すことができます。現実の飛行時のように、気が散る心配もありません。
つまり、Flight Simulator は、コンピュータ ベースの安価なプロシージャ/タスク型のトレーニング プログラムと考えることができます。Flight Simulator を使用すれば、航空会社や企業、軍のパイロットが長年利用してきた多くの利点を、自宅にいながらにして利用できるのです。適切な方法で計画を立てて Flight Simulator を使用すると、パイロットにとって何よりも重要な機器である頭脳の調子がよくなります。Flight Simulator は、正式な地上教育やフライト教育に代わるものではありませんが、Flight Simulator を使用することによって、フライトの 90% の部分、つまりメンタルな部分を研ぎ澄ますことができます。
ハードウェアおよびその他のアクセサリ
パイロットから、Flight Simulator を操作するにはどのような機器を用意すればよいかをよく聞かれます。彼らは、航空用電子機器やその他の航空機コントロールをシミュレートするために、高価な操縦輪やジョイスティック、ラダー ペダル、スロットル ユニット、コンソールなどが必要かどうかが気になるのです。
これらのアイテムがあれば、Flight Simulator はさらに楽しいものになります。 しかし、Flight Simulator を訓練ツールとして効果的に使用する上で、必ずしもフルモーションのシミュレータは必要はないと私は思います。確かに、ジョイスティックまたは単純なヨークは重要ですが、それ以外のハードウェアは必須ではありません。どれほど精巧な仮想コックピットを作り上げても、実際の飛行機に乗り込む際には、すべてのコントローラおよびスイッチを認識し、それらを正しく使う方法を習得して、各飛行機に固有の “感覚” に慣れるまで数時間かかります。IFR の場合は特に時間が必要でしょう。けれども、Flight Simulator で頭を訓練しておけば、いくつかの手順を飛ばして学習を開始できるのです。
周辺機器のほかにも、最近の航空チャートがあれば便利でしょう。必ずしも最新のものである必要はありません。また、キング スクールとセスナ社のマルチメディア自家用操縦士コースおよび計器飛行証明コースで配布されるテキストブックや、ロッド マチャド氏の『Private Pilot Handbook』などの訓練マニュアルを持っていれば、よい習慣をたくさん身につけることができるでしょう。
Flight Simulator の訓練機能
この後のセクションでは、Flight Simulator で特に私がお勧めする訓練機能と、それが飛行スキルの学習や上達にどのように役立つかを説明します。これらの機能の詳細については、[ラーニング センター] の各ドキュメントを参照してください。
- マルチプレイヤー : 航空機の共有
- マルチプレイヤー : 管制塔 (タワー)
- フライトの作成および選択
- 気象
- エンジン、システム、および計器の故障
- フライトの分析
- マップ
- 表示ウィンドウとウィンドウ
- フライト ビデオ
- 自動操縦機能
- 高速移動
- IFR 訓練パネル
マルチプレイヤー : 航空機の共有
数千マイルも離れたところにいる相手と、飛行訓練のセッション (訓練生として、またはインストラクターとして) を一緒に行うことを想像してみてください。Flight Simulator マルチプレイヤーでは、インターネットまたはローカル エリア ネットワーク (LAN) 経由で訓練生またはインストラクターと航空機を共有することができます。
航空機の共有の詳細については、ラーニング センターの「マルチプレイヤーで航空機を共有する」を参照してください。
マルチプレイヤー : 管制塔 (タワー)
ATC をマスターするのは、新米パイロットにとって怖気づいてしまうほど大変なことかもしれません。Flight Simulator のマルチプレイヤー管制塔機能を利用して、インターネットまたはローカル エリア ネットワーク (LAN) 経由で、訓練生のために航空交通管制の役割を務めることができます。
詳細については、「マルチプレイヤーの ATC」を参照してください。
フライト
特定の航空機に乗り、特定の場所から、設定した気象や表示などの条件で、すぐにフライトを開始できる機能です。
フライトを作成して保存しておくと、たとえば強い横風の中を地元の空港にアプローチする訓練をすぐに開始できます。目的の航空機を繰り返し地元の空港に移動させ、気象を調整し、離陸してアプローチの開始地点まで飛行する必要はありません。すべての設定が済んだら、その状況をフライトとして保存しておけば、マウスを数回クリックするだけで、設定した条件で設定した場所から、いつでもフライトを開始できます。
また、この機能は、計器進入、ホールディング パターンへの進入、VOR 航法といった特殊なスキルの訓練をする場合にも便利です。空中で開始するフライトをロードすると、そのような特定の課題に的を絞った訓練をすぐに開始できます。離陸や演習空域への飛行、システム全体の設定などに時間を取られることはありません。
もしあなたが意地悪なインストラクターなら、各機器、あるいはすべての航空機システムが故障する状況を作り出すことも可能です。
フライトの選択方法、作成方法、および保存の詳細については、「フライトのすべて」を参照してください。
気象
Flight Simulator では、たとえばアリゾナ州にいながらにして、太平洋北西部の湿った灰色の空でのフライトを練習できます。Flight Simulator の高度な気象機能を使用すれば、雲の層、濃霧、横風など、困難な状況を簡単に作成できます。
気象がフライトに与える影響を学習する場合、低い雲を作って視界を悪くできる機能は非常に便利です。たとえば、VFR または IFR の最低気象条件に設定し、アプローチの最終段階で計器飛行から有視界飛行に切り替える練習をすることもできます。
詳細については、「気象」を参照してください。
エンジン、システム、計器、およびコントロールの故障
Flight Simulator では、エンジン、各計器、およびシステム全体のリアルでランダムな故障を体験できます。訓練生は、インストラクターが水平儀のカバーに手を伸ばすのを見て計器の故障に気付くのではなく、訓練生自身が計器スキャンの中で吸引圧力計をチェックし、真空ポンプ系統の故障のかすかな兆候に気付かなければなりません。
故障自体は、非常にリアルなものです。たとえば、真空ポンプ系統の故障が発生すると、実際の飛行機で真空ポンプが故障した場合と同様に、水平儀内部のジャイロがゆっくりと停止し、徐々に傾いて動かなくなってしまいます。
詳細については、「故障の設定」を参照してください。
フライトの分析
Flight Simulator の強化されたフライト分析機能は、実際の飛行機のフライト データ レコーダーと非常によく似た機能を持っていて、フライトの高度、針路、速度などの情報が自動的に記録されます。マップ上でフライトを再生すると、ATC の指示に正しく従ったか、ILS のローカライザおよびグライド スロープに正しく乗ったかどうかがわかります。しかも、ビデオ カセット レコーダーのような簡単なボタン操作で、フライトの巻き戻し、再生、および一時停止が行えます。
詳細については、「フライトの分析」を参照してください。
マップ
Flight Simulator のマップ表示は、自機の位置をチェックするだけのツールではありません。マップでは、航法援助施設の位置、高高度および低高度エアウェイ、インターセクション、飛行経路を地形に重ねて表示できます。また、Flight Simulator の空港と施設の一覧としても使用できます。航法援助施設、無線周波数、空港の標高など、航法に関する詳細な情報をマップから直接確認することもできます。
詳細については、「マップの使用法」を参照してください。
表示ウィンドウとウィンドウ
実世界の航空機の操縦席から見る景色ほどすばらしいものはありません。Flight Simulator で、操縦席からの景色を楽しみながら、離着陸や飛行中の飛行機の姿勢を同時に見たい場合は、複数の表示ウィンドウを利用すると便利です。
詳細については、「表示ウィンドウとウィンドウの使用法」を参照してください。
フライト ビデオ
パイロットは皆、操縦の腕前を自慢するのが大好きです。Flight Simulator には以前からフライト ビデオ レコーダーが用意されていますが、米国海軍でもビデオを使用して各機の着艦を評価しているように、この機能もまた訓練支援ツールとして大いに利用できます。
詳細については、「フライト ビデオ」を参照してください。
自動操縦機能
Flight Simulator では、自動操縦を利用することによって、新しいスキルを学習する際に、フライトの負荷をいくらか軽減できます。複雑な手順で飛行しながら、ADF や VOR の指針がどのように動くのかを学習するときは、高度や針路の維持に煩わされて状況をさらに複雑にしてはいけません。状況を完全に把握できるまで、針路バグまたは自動操縦制御パネルを使用して飛行機を飛行させましょう。手順を十分に理解し、計器を読み取って位置が把握できるようになったら、自動操縦をオフにしてすべての課題を自分でこなしてください。
詳細については、「自動操縦」を参照してください。
高速移動
高速移動は、デモンストレーションを行う場合や航法機器の読み取り方を学習するときに便利なツールです。 たとえば、コックピット表示で高速移動を利用すると、航法援助施設の周囲を自在に移動して、VOR、ILS、および NDB の指針がどのように動くのかを観察できます。また、着陸訓練をやり直したり、別方向からトラフィック パターンに入ったりする場合にも、高速移動を利用すると航空機の位置を迅速に変更できます。
詳細については、「航空機の位置の設定」を参照してください。
IFR 訓練パネル
Flight Simulator には、セスナ スカイホーク 172 SP 用の IFR 訓練パネルが用意されています。IFR のスキルを学習、および訓練するパイロットのために用意されているこのパネルでは、1 つのウィンドウに飛行計器と航空用電子機器が表示され、重要なコントローラと計器を常に確認できます。機外の景色はごく小さなウィンドウにしか表示されませんが、IFR 手順の訓練時は “雲の中” にいるので、外の景色を見る必要はありませんよね。
創造的なアプローチ
ここまでに説明した機能がすべてではありません。Flight Simulator には、効果的な訓練ツールとして活用できる機能がほかにもあります。創造的な発想が重要です。また、時には一歩引いて、Flight Simulator を単なる飛行ツール以上のものとして考えてみることも大切です。これらを念頭に置いて、ここからは主にインストラクターのためのヒントをいくつか紹介しましょう。
難しい概念を視覚的に説明できるホワイト ボード
私は、Flight Simulator が優れたホワイト ボードになり得ることを発見しました。フライトとフライト ビデオを作成しておくことによって、地上での講習時やフライト前後のブリーフィングの際、Flight Simulator を使用して重要な概念を説明できるのです。たとえば、2 つの VOR ラジアルのインターセクションで、FAA 推奨の並行進入でホールディング パターンに進入する図を一生懸命に描いた後、生徒たちの方を振り返ると、彼らはピカソの肖像画から必死に鼻を見つけようとしている美術館ツアーの一行のような顔つきをしているのが普通です。しかし、大型のモニタに Flight Simulator を表示し、フライト ビデオを再生すると、その際に VOR の指針がどのように動くのかをクラス全員に見せることができます。同じ方法で特殊な IFR 手順のデモを実施すると、チャートまたはアプローチ チャートに詳細情報をリアルタイムに表示しながら、計器の示す値を生徒に比較させることもできます。講習を進める過程で重要なポイントに来たら、P キーを押すと、シミュレーションを停止させたり、再開させたりできます。
フライトの事前練習
航空会社のパイロットは、見知らぬ空港へのフライト前に、必ず空港資格課程を受講します。私たちもそれを見習うべきです。見知らぬ空港を目指して長い旅に出る場合は、Flight Simulator を使用して、フライトの練習を事前に行うことができます。Flight Simulator には、Jeppesen NavData データベースが組み込まれており、世界中の 24,000 か所以上の空港へ飛ぶことができます。大陸横断などの長距離飛行に出発する前には、高高度および低高度エアウェイに沿って飛び、計器を使用した出発、到着、およびアプローチに慣れておくとよいでしょう。また、Flight Simulator を使用すると、旋回飛行からのアプローチや、山などの障害物に囲まれた空港への着陸も練習できます。私は、訓練操縦士に Flight Simulator で大陸横断の単独飛行をさせて、その行程の一部をチェックしてから、彼らをそれぞれの目的地に送り出すようにしています。VOR と視覚の両方でチェックポイントを確認し、各空港へのアプローチ方法を理解したり、飛行計画を気象などの環境条件により変更しなければならない場合に備えて、代替手段を検討したりすることによって、訓練操縦士たちが自信を付けることができるからです。また、インストラクターとしては、彼らが実施しようとしているフライトの課題を本当に理解しているのかどうかを確認できるメリットもあります。
実際の飛行機ではやってはいけないこと
航空会社では、パイロットが異常な状況および緊急事態に対処できるように、高度なシミュレータを使用して訓練を行います。これと同じように、Flight Simulator でも実際の飛行機での練習が非現実的で危険な演習を実施したり、そのような状況を作り出したりすることが可能です。
たとえば、加速失速や、航空機の対気速度と姿勢に関係なく失速が発生する可能性があるという概念を、実際に身をもって理解しているパイロットはほとんどいないでしょう。実機訓練では、パイロットは機首の方向が水平以上で比較的低速という条件下でしか失速を経験しません。しかし、Flight Simulator を使用すると、黄色の円弧内の十分内側の対気速度で急降下しているときに、ヨークを突然後ろに引っ張るとどうなるか、その状況を生徒に見せることができますし、また、パイロットが計器スキャンを怠たると、どのようにきりもみ状態の急降下が発生するのかを実演することもできます。 離陸直後にエンジンが停止した場合、空港に旋回して戻るのがなぜ良くないことなのかを生徒に印象強く教えることもできます。
楽しく飛ぶ
学習は楽しく行うべきです。Flight Simulator という優れたツールを使用すると、生徒を刺激し、やる気が続くような課題を設定できます。気象やメンテナンスなどの事情によって実際のフライトを実施できないような場合は、特にそうです。
また、同僚のパイロット用に課題を設定することもできます。そのような場合は、同じ保存済みのフライトから開始し、彼らの理想的な ILS アプローチやホールディング パターンへの進入をフライト ビデオに記録してもらいましょう。Jeppesen のバインダには、計器を使った複雑な出発手順や到着手順が収められています。そのような課題を、「今すぐクリアしてみないか」と訓練操縦士や同僚パイロットに持ちかければ、彼らはきっと驚くことでしょう。それはあたかも、「そちらの機への許可は取り消します」と ATC から言われたときのようなものです。そのような状況で実際に考えなければならないのは、航空機の操縦方法ではなく、自機の位置、電子機器の設定方法、そして 2 ~ 3 ステップ先の手順です。こうした訓練をしておくと、長時間に及ぶ機械的なフライトで頭の回転が鈍っているときにも、フライト スキルの精神的な面を鍛えることができます。もしかして自分には素質があるかもしれない、と一度でも思ったことがあるのなら、ぜひボーイング 737-800 をスペース シャトルに見立てて着陸に挑戦してみてください。これを行うには、マップで自機を長い滑走路へのファイナル アプローチの位置に設定します。エンジンを切り、ギア、フラップ、およびスポイラーを出した状態で、無事に着陸できるかどうかやってみてください。その際、フライト ビデオも忘れずに記録しておきましょう。もし、うまく行ったあかつきには、履歴書と一緒に NASA の人材募集に提出できるかもしれませんからね。
フライト時間の記録
Flight Simulator で実施したフライト時間を正式なフライト時間として記録できるのでしょうか、という質問をよく受けますが、現時点の米国では、それは認められていません。FAA では、1997 年 5 月 12 日付けで、Advisory Circular (諮問回状) AC61126「Qualification and Approval of Personal Computer-Based Aviation Training Devices (個人用コンピュータを使用した飛行訓練装置に関する資格認定と認可)」を公布しています。この AC61126 により、FAA ではコンピュータを使用したシミュレーションの価値を認める方向へ、小さな一歩を踏み出しました。諮問回状では、訓練デバイスの認可条件が示されています。ただし、各種スイッチやコントローラを備えた高価なコンソールが要件に含まれていることもあり、現在までに認可されているシステムはごく少数です。より端的に言えば、たとえ認可されている PCATD を使っても、公認飛行教官の直接指揮のもとでの訓練という条件で、最初の計器飛行証明に必要な訓練のわずか 10 時間しかフライト時間を記録することはできません。IFR 資格の保持に必要なアプローチなどの演習を PCATD で行っても、その時間を記録することはできません。また、認可されている PCATD を計器熟練度チェックで使用することもできず、PCATD による単独飛行時間を記録したり、自家用操縦士技能証明に必要なフライト時間に PCATD による訓練時間を充当したりすることもできません。
関連リンク
このトピックの著者であるブルース ウィリアムズは、Microsoft で Flight Simulator のビジネス開発マネージャを務めていましたが、自らも 1970 年代半ばごろからパイロットの経験を積んでいます。単発および多発エンジンの陸上機限定計器飛行証明と、事業用操縦士技能証明を取得しており、認定飛行教官および計器飛行教官であり、さらには計器飛行証明に関する上級地上教官技能証明も所持しています。シアトルのフライト スクールで非常勤講師を務め、エクストラ 300 で曲技飛行を行い、余暇には実にさまざまな航空機の操縦を楽しんでいます。ASA 発行の『Microsoft Flight Simulator as a Training Aid: A Guide for Pilots, Instructors, and Virtual Aviators』の著者でもあります。