コックピットの基本


航空機の計器、ボタン、レバーの一般的な機能を知る

航空機の構造は、比較的単純なものから、非常に複雑なものへと進化してきました。しかし、セスナ スカイホーク 172SP であろうと、ボーイング 777-300 であろうと、航空機を操縦することに変わりはありません。航空機には、機種による違いよりも共通点のほうが多いのです。たとえば、現代のほとんどの航空機には、6 つの基本的なコックピット計器が装備されています。対気速度計、高度計、水平儀、定針儀、旋回計、昇降計です。これら 6 つの計器、およびトリムやフラップなどのいくつかの一般的なコントロール装置の使い方を学べば、どのような航空機でも操縦できるようになります。

ピトー静圧計器

6 つの主要な航空計器のうち、3 つは気圧を測定するものです。高度計、対気速度計、昇降計の 3 つは、ピトー静圧計器と呼ばれます。

3 つのピトー静圧計器はすべて、ピトー管と呼ばれる静圧ポートに接続されています。このポート (吸気管) からそれぞれの計器内部へ外気を取り込みます。航空機が上昇すると気圧は下がり、降下すると気圧は上がります。高度計および昇降計では、この気圧の変動が高度、および上昇率または降下率として表示されます。

ピトー管に接続されているもう 1 つの計器である対気速度計は、静圧とラム圧の差を計測します。ラム圧とは、外気がピトー管に取り込まれる際に発生する気圧のことです。航空機の速度が上がると、外気がピトー管に流れ込む速度も上がり、ラム圧が上昇します。対気速度計には、静圧とラム圧の差が対気速度として表示されます。この値は通常、ノットまたはマッハ単位で表されます。

ジャイロ計器

6 つの主要飛行計器のうち他の 3 つは、ジャイロスコープを使用して航空機の高度、針路、旋回の割合などの重要な航空情報をパイロットに提供します。

空間に対する方向保持性と摂動

ジャイロスコープの動きはコマに似ています。ジャイロスコープには、空間に対する方向保持性と摂動という 2 つの特性があります。この特性を航空計器として利用します。詳細については、「ジャイロの特性」を参照してください。

水平儀と定針儀は、ジャイロの “空間に対する方向保持性” の原理を利用した計器です。傾きに抵抗するというジャイロの性質を利用して、実際の水平線または特定の方向を常に示します。

旋回計は、摂動を利用して方向と旋回率に関する情報を表示します。摂動の詳細については、下の「ジャイロの特性」を参照してください。

ジャイロの動力

ほとんどの軽量航空機では、エンジン駆動の真空ポンプによって、水平儀と定針儀の中にあるジャイロが回転します。真空ポンプに故障が発生した場合に備え、旋回計の中には通常、電気モーターによって回転するジャイロがあります。

ジャイロの特性

– キング スクールの『Cleared for Takeoff』より

遊びに使うコマと、航空機の操縦との間にどのような関係があるのでしょう。実は大きな関係があります。

  • 空間に対する方向保持性

子どものころ、コマで遊んだときのことを思い出してください。回転しているほとんどの間、コマは直立しています。当時は知らなかったかもしれませんが、これは、すべての回転する円盤に共通する、空間に対する方向保持性と呼ばれる特性を示しています。名前が示すとおり、回転する円盤にはその状態を保とうとする性質があります。

ジャイロスコープ (ジャイロ) とは、軸が枠に取り付けられている回転する円盤です。円盤は、枠の中でさまざまな方向に自由に動きます。これには、コマと同じように状態を保とうとする性質があります。セスナ スカイホーク 172SP のいくつかの計器が、空間に対する方向保持性の原理を基に動作するジャイロスコープを使用している理由がわかったでしょう。

  • 摂動

回転する円盤のもうひとつの特性が摂動です。回転するコマの軸を横から押すと、その力に対する抗力がコマに生じ、押された方向から 90°の方向にコマが動きます。 セスナ スカイホークの機首を下げると、機首が左 (つまりプロペラという円盤に働く力に対して 90°の方向) に進もうとするのも、同様にプロペラのジャイロ効果によるものです。 これらの例は、ジャイロの摂動を表しています。

ところで、手放しで自転車に乗っているときに、曲がりたい方向に体を傾けると自転車もその方向に曲がりますが、これも摂動の効果です。 摂動は予測可能な動きなので、セスナ スカイホークに備わっているジャイロ計器にその原理が利用されているのです。

摂動は、意図して用いると便利なものです。しかし、マイナスに働くこともあります。ベアリング内の摩擦などの理由で、不必要な摂動が発生する場合があります。そのような場合は、空間に対して一定の方向が保持されず、ジャイロにずれが生じます。このような場合に備えて、航空機にはいくつかの選択肢が用意されています。ジャイロ自体が持つ修正機能で自動的に調整されるのを待つか、パイロットが手動でジャイロを調整します。

対気速度計

対気速度計は、差動圧力計の 1 つです。ピトー管内の気圧と、航空機を取り巻く比較的乱れの少ない空気の気圧との差を測定します。この差が、1 本の指針により対気速度として表示されます。

1976 年以降にアメリカで製造された航空機は、ノットで指示対気速度を示す対気速度計を装備しています。それ以前に製造された航空機は、一般に “マイル/時間 (mph)” で指示対気速度を示す対気速度計を装備しています。

対気速度計のしくみ

対気速度計は、ピトー管と静圧システムの両方に接続されている唯一の計器です。 静圧システムからの空気で対気速度計のケースが満たされることにより、伸縮するダイアフラムに “基本の” 圧力が伝わります。航空機が動くと、ピトー管内部に空気が押し込まれ、その空気でダイアフラムが満たされます。ピトー管内に押し込まれる空気の圧力 (ラム圧) および速度が増加すると、ダイアフラムが膨らみます。この伸縮に合わせて、ダイアフラムに接続された指針が回転します。この指針が、計器上で対気速度を示します。

ボンバルディア リアジェット 45 とボーイング 737-800 の対気速度計には、赤と白の縞模様の指針があります。フライト データ コンピュータは、現在の高度、気温、および気圧に関する情報から超過禁止対気速度を計算します。この計算は、航空機の上昇および降下時に継続的に行われます。赤と白の縞模様の指針は、この超過禁止対気速度を示しています。

注意 : Flight Simulator のチェックリスト、操作手順、および「航空機情報」のトピックで使用されている “速度” は、特に断りのない限りすべて指示対気速度で示されています。

ヒント : フライトをよりリアルにするため、Flight Simulator の標準の設定では、速度は指示対気速度で表示されます。航空機が上昇すると、真対気速度は上がりますが、指示対気速度は下がります。高く上昇すればするほど、指示対気速度 (IAS) と真対気速度 (TAS) の差は大きくなります。 真対気速度を表示するには、[航空機] メニューの [リアリティの設定] をクリックし、[設定 – リアリティ] ダイアログ ボックスの [計器とライト] にある [真対気速度で表示] をクリックします。

高度計

高度計は気圧を測定する、感度の高い気圧計です。気圧を高度で表示するように調整されていて、通常、平均海面 (MSL) からの高度をフィートで表します。

高度計のしくみ

高度計は静圧孔と連結しています。計器のケース内部の気圧は、航空機が上昇すると低くなり、降下すると高くなります。ケース内の圧力が低くなると、計器のケース内の密閉されたウエハーが膨張します。気圧が高くなるとウエハーは圧縮されます。このウエハーの膨張や縮小によって、ウエハーと連動している指針が、時計の針と同じように高度計の盤面を回転します。

高度計の読み取り

多くの小型機には、2 本の指針を持つ高度計が取り付けられています。長い指針は 100 フィートの単位を示し、短い指針は 1,000 フィートの単位を示します。高度が 10,000 フィート (3,048 m) 以下のときは、くさび型の縞模様の小さな指示器が表示されています。たとえば、長い指針が 5、短い指針が 2 と 3 の間にある場合、航空機は高度 2,500 フィート (762 m) MSL に位置しています。くさび型の縞模様の指示器が表示されていない場合は、指針が同じ位置にあっても、航空機は 12,500 フィート (3,810 m) MSL に位置していることになります。

一般に、ジェット機およびその他の高性能航空機は、”指針とドラム” を装備しています。長い指針は、100 フィート単位で高度を示し、自動車の走行距離計に似た計器が、アラビア数字で高度を表示します。

高度計の設定

高度を正確に表示するには、現在の気圧と平均海面気圧を比較して、高度計を規正しなければなりません。設定値は、セスナ スカイホーク SP の計器上の “2” と “3” の目盛りの間にあるコールスマン ウィンドウに表示されます。離陸前に、パイロットは設定ノブを回して正しい高度計規正値を設定します。適切に設定すると、機体が離陸するまで、高度計は空港の標高 (0 ではありません) を示します。

パイロットは、ATIS 放送、航空交通管制、フライト サービス ステーション (FSS) から、現在の高度計規正値を入手できます。これらの情報源がどれも利用できない場合でも、パイロットは高度計を規正する必要があるため、出発する空港の標高が表示されるように補正します。 パイロットは、飛行中、および目的地の空港周辺でも現在の高度計規正値を受け取る必要があります。

高度の種類

航空機の高度計は、海面を基準とする高度 (MSL) を示すように設計されています。この値は標準大気状態における海面高度を示します。実際の気温と気圧が標準大気状態と一致することはほとんどありません。したがって、パイロットはさまざまな高度に関する理解を深め、標準ではない状態で発生する高度計の誤差を修正する方法を知っておく必要があります。

  • 指示高度 : 高度計に表示される高度です。現在の気圧を海面高度の気圧に設定した高度計では、指示高度は海面を基準とする航空機の高度とほぼ等しくなります。
  • 気圧高度 : 水銀柱の高さが 29.92 インチ (1013.2 ヘクトパスカル) になる気圧に設定したときに、高度計に表示される高度です。気圧高度は、航空機のパフォーマンス、真対気速度、および真高度を決定する大切な要素となる密度高度を計算するときに重要です。アメリカでは、18,000 フィート (5,486 m) MSL 以上で飛行するときは、気圧高度、つまり “フライト レベル” を使用することになっています。その高度以上を飛行する場合は、常に高度計規正値を 29.92 に設定する必要があるのはこのためです。
  • 密度高度 : 標準気温との差を基に修正した気圧高度です。 航空機が離着陸の際に必要とする滑走路の長さ、および上昇率を決定するには、密度高度を算出する必要があります。密度高度の計算は、気温の高い日に標高の高い空港から離陸する場合に特に重要です。
  • 真高度 : 海面からの実際の高さを表します。高度計規正値を現在の海面上での気圧に設定した場合、指示高度は真高度とほぼ等しくなります。
  • 絶対高度 : 常に地表からの高さを表します。航空機にレーダーまたは電波高度計が装備されていない場合は、チャートに表示される地形高度と指示高度を比較して、絶対高度を計算する必要があります。
  • レーダーまたは電波高度 : 大型航空機に搭載されたレーダーまたは電波高度計に表示される絶対高度です。レーダーまたは電波高度は、ファイナル アプローチと着陸の際に使用します。雲底が低く視程が短い場合に、決心高度を判断するうえで特に役立ちます。

高度計に生じる誤差

高度計は、気温と気圧の標準状態において、平均海面からの高さを正確に表示するように調整されています。

通常、気温の変化によって大きな誤差が生じることはありません。しかし、気圧の変化が標準的な割合でない場合は、パイロットが定期的に、現在位置の海面上の気圧に合わせて高度計を補正しないと、正確な高度が表示されません。実際、FAA の規制では、飛行中は正確な高度計規正値を使用しなければならないとされています (FAR 91.121 を参照)。

たとえば、離陸前に高度を 30.10 インチに設定したとします。パイロットが高度計規正値を変更せずに、低気圧が発生している地域の空港へ飛行すると、光度計は気圧の低下を高度の上昇と判断します。 つまり、高度計には、海面を基準とした航空機の実際の高度よりも高い値が表示されるのです。

このパイロットが正確な高度を飛行していると思っても、正確な現在位置の高度計規正値を使用して同じ地域を飛行する他の航空機と比較すると、両者の高度は異なるでしょう。

ヒント : 高度計を現在の気圧に設定するには、B キーを押します。

水平儀

姿勢計とも呼ばれる水平儀は、ピッチとバンクの情報を同時に表示する唯一の計器です。

水平儀のしくみ

水平儀に取り付けられたジャイロは水平方向に回転していて、航空機がバンク、上昇、降下すると、実際の水平線に対する回転方向を維持します。

ただし、水平儀だけでは、航空機の水平飛行の維持や、上昇および降下を確認することはできません。水平儀は、水平線に対する航空機の姿勢だけを示します。飛行経路については、対気速度計、高度計、定針儀などの他の計器のデータも含めて、総合的に判断する必要があります。

水平儀の上部にある目印はバンク角を示します。目印は 10°、20°、30°、60°、および 90°を示します。水平の線はピッチ姿勢を示し、水平線を基準にした機体のピッチ姿勢を表します。水平儀の下半分にある、1 点に集まって見える白い線も、特定のバンク姿勢を取る際に役立ちます。

制限事項

小型航空機の多くに採用されている水平儀のジャイロは、ピッチ姿勢が +/-70°以上、バンク角が 100°以上になると 180°回転します。その場合の水平儀は正確な状態を表示しません。自動的に再調整されるのを待つ必要があります。再調整するには、通常、水平直線飛行を数分間続ける必要があります。曲技飛行用の航空機や大型の航空機の多くには、360°のピッチ姿勢およびバンク角に対応するジャイロが装備されています。

現代の水平儀の多くは、”空” が青く、”地面” が茶色で描かれています。これは、英語の “keep the blue side up (青い面を上に)” というフレーズに由来するものです。

定針儀

“ディレクショナル ジャイロ (DG)” とも呼ばれる定針儀は、3 つのジャイロ計器のうちの 1 つです。コンパスと合わせると、定針儀は正確で安定した、航空機の磁針路を示します。定針儀は磁針路を測定できないため、コンパスがなければ役に立たない、という点に特に注意してください。磁気コンパスだけが地球の磁場を読み取ることができるのです。磁気コンパスの読み方に関する詳細については、「昔ながらの航法」を参照してください。

コンパスは、加速、減速、および地球の磁場のひずみから生じるさまざまな誤差の影響を受けやすいため、定針儀の助けが必要です。 ぶれたり、旋回に先行したり遅れたりするコンパスは、乱気流の中や大きな姿勢変化を伴う飛行の間は特に読み取りにくいものです。コンパスだけで飛行する難しさを体験するには、コンパスを別ウィンドウに表示するとよいでしょう。

定針儀のしくみ

定針儀の中のジャイロは垂直方向に回転します。針路を示すコンパス カード (目盛りが記された円盤) は、航空機が旋回してもその方向を保とうとします。このカードの見た目上の動きによって、パイロットはすばやく正確に航空機の針路と旋回方向を読み取ることができるのです。

コンパス カードには 5°刻みの目盛りが付けられ、30°ごとに数値が表示されています。また、主要な方位が “N”、”S”、”E”、”W” で示されています。

定針儀の調整

セスナ スカイホークのような小型航空機では、離陸前に定針儀をコンパスに合わせ、飛行中も定期的にリセットして、コンパスと定針儀が常に合っているようにします。 基本となるジャイロは時間経過と共に歳差運動を行うため、定針儀には針路のずれが生じます。原則として、針路のずれは 15 分ごとに 3°以内です。

ヒント : 手動で定針儀をリセットまたは調整するには、D キーを押します。

通常、大型航空機の定針儀は、自動的にコンパスに合わせて調整され、維持されます。

注意 : 定針儀の針路のずれを生じさせるには、[航空機] メニューの [リアリティの設定] をクリックし、[設定 – リアリティ] ダイアログ ボックスの [計器とライト] にある [ジャイロのドリフトを発生させる] チェック ボックスをオンにします。

旋回計

旋回計は、実際は 2 つの計器です。ジャイロ部分は、航空機の旋回率、つまり方向転換の速度を示します。傾斜計、または滑り指示器と呼ばれる管に入っているボールは、旋回の性質、つまりその旋回が “調和飛行” しているかどうかを示します。

旋回計のしくみ

航空機が旋回すると、力がかかるためジャイロは摂動を起こします。この摂動率によって、計器内のミニチュア エアクラフトが左右に傾きます。旋回が速ければ速いほど摂動も大きくなり、ミニチュア エアクラフトのバンク角も大きくなります。

標準旋回

計器内のミニチュア エアクラフトの翼が、”L” と “R” の上にある細い目盛りと揃っている場合、航空機は標準旋回していることを示します。たとえば、1 秒間に 3°の標準旋回を行う航空機は、2 分間で 360°旋回します。

バランス作用

旋回の際にかかる力のバランスがとれていて、航空機が調和飛行を行っている場合、滑り指示器の黒いボールは、2 本の垂直参照線の間に留まっています。ボールが旋回に対して内側に動く場合は、機体が内滑り (スリップ) しています。ボールが旋回に対して外側に動く場合は、機体が外滑り (スキッド) しています。

外滑りを修正するには、旋回方向へのラダー操作を減らし、バンク角を大きくしてください。

内滑りを修正するには、旋回方向へのラダー操作を強め、バンク角を小さくしてください。

オート ラダー機能を使用すると、調和飛行を維持するようにラダーが自動的に動きます。

バックアップとしての使用

通常、旋回計は電気で動作しているため、真空ポンプが故障して、水平儀および定針儀が使用できなくなっても、使用することができます。

指針とボール

旋回計は、現代の軽飛行機の一般的な装備です。古い航空機では、「旋回滑り計」または「指針とボール指示器」と呼ばれる、同様の計器が装備されているものもあります。これらの計器は、同じ情報を異なる形で示します。

昇降計 (VSI)

昇降計 (VSI または垂直速度計とも呼びます) は、航空機が上昇または降下する際の高度変化の速度を示します。VSI は通常、1 分あたりの高度変化をフィート単位で表示します。

計器飛行中、アプローチ時の正しい降下率を決めたり、上昇率/降下率を維持したりする際には、VSI を主要計器として使用します。

VSI のしくみ

VSI は静圧システムに連結されています。VSI のケース内部の気圧は、航空機が上昇すると低くなり、降下すると高くなります。 ケース内部では、高度計で使用されているものとよく似た、密閉されたウエハーが気圧の変動に応じて膨張、縮小します。ウエハーが伸縮すると、ウエハーに連結されている指針が回転して上昇率および降下率を示します。ウエハーには小さな調整孔があり、この穴によってウエハー内の気圧とケース内の気圧が等しくなります。ウエハー内の気圧がケース内の気圧と等しくなると、指針は 0 に戻り、水平飛行を示します。

VSI の使用方法

VSI だけを見て、水平飛行を維持しているかどうかを判断することはできません。航空機が上昇または降下を始めると、VSI は、まず上昇または降下を正しく示します。ただし、航空機の動きよりも遅れて反応するため、この VSI の値が航空機の実際の上昇率または降下率を表示するまでには数秒かかります。VSI の針の動きを見続けていると、まるでジェットコースターに乗っているかのような気持ちになるでしょう。VSI よりも対気速度計と高度計の方が信頼できます。水平飛行から外れた場合、正確な数値が即座に表示されるからです。この 2 つの計器と VSI を交互にチェックして、航空機が適切な割合で上昇または降下していることを確認します。

トリム コントロールの使用

トリム コントロールは、車のクルーズ コントロールに似ています。航空機を一定の速度や姿勢に保つ必要があるときに、トリムを使用すると、パイロットが操縦桿などの操縦装置に力をかけ続けなくても、これらを特定の位置に保持することができます。

ほとんどの小型航空機には、エレベータにのみトリム タブが 1 つ取り付けられています。大型の航空機の場合は通常、エルロン、ラダー、エレベータの主操縦翼面にトリム タブが取り付けられています。

トリム コントロールのしくみ

小型機の場合、パイロットは、トリム操作用のホイールを回転させてトリム タブを動かします。通常、トリム ホイールはエンジン制御装置の下か、2 席ある操縦座席の間にあります。 機首下げ方向にトリムを作動させるには、ホイールを前方または上方へ回転させます。機首上げ方向にトリムを作動させるには、ホイールを後方または下方へ回転させます。

トリム ホイールを動かすと、トリム タブは操縦翼面と反対の方向に移動します。エレベータを上昇位置に保つには、トリム タブを下に動かします。

トリム コントロールの役割

エレベータ トリムは、エレベータ上を流れる空気が発生させる力の変化を補正します。機体が水平巡航飛行を維持できるように正しくトリムを取っている場合は、時折発生するバンプ (細かい揺れ) や針路の小さな修正のために、操縦桿やペダルで微調整する以外は、”手放し” で飛行することができます。ただし、出力を上げると機体は加速し、より多くの空気が尾翼上を流れるため、機首上げ傾向が出ます。高度を維持するには、操縦桿を向こうに倒さなければならないでしょう。操縦桿を向こうに倒した姿勢を数分間以上も続けるのは、疲れるし難しいので、エレベータ トリムを下げて尾翼にかかる負圧を補正します。

出力を下げると、機体は減速し、尾翼上を流れる空気が減少するため、機首は下がる傾向にあります。高度を維持するには、操縦桿を手前に引かなければなりません。そこで、エレベータ トリムを上げて尾翼にかかる負圧を補正します。

速度制御のためのトリム

トリム コントロールは、航空機の速度を制御するために使用することもできます。たとえば、航空機を “手放し” で水平直線飛行させるために、エンジン出力を巡航用の設定にし、機体を一定の姿勢に保つように正しくトリムを取ります。すると、対気速度はすぐに一定の速度に安定します。その後出力を下げると、航空機は減速し、機首が下がります。トリム設定をそのままにして飛行を続けると、機体は先ほど確立した巡航速度のまま、徐々に安定した降下に入ります。同様に、出力を上げると機首は上がり、巡航速度のまま上昇姿勢で安定します。

操縦ではなく、操縦を補助するトリム

トリム コントロールは操縦桿などの操縦装置の操作を楽にするためにだけ使用する、ということを覚えておいてください。トリム コントロールで航空機を操縦しようとしてはいけません。機体のピッチ姿勢を変える場合は、操縦桿による適切な操作を行い、必要であれば出力設定を変更し、機体が安定してからトリムを調整してください。

フラップ

フラップは主翼を変形させ、揚力と抗力を増加させます。この 2 つの力が増加することによって、航空機を低い対気速度で飛行させたり、速度を上げずに急角度で降下させたりすることが可能になります。フラップは主操縦翼面ではないため、フラップに頼って操縦しないでください。

フラップのしくみ

フラップは、主翼の後縁部から下方に折り曲がります。 それによって主翼の湾曲率、つまりキャンバ (翼断面の反り) が増すため揚力が増加します。また、フラップが下がることで抗力も増加します。通常、パイロットは数度ずつ小刻みにフラップを下げていきます。ほとんどの航空機の場合、フラップは 0°(完全に上げられた状態) から 40°(完全に下げられた状態) の範囲で、5°ないしは 10°ずつ動きます。フラップがあまり下がっていないときは、抗力よりも揚力の方が増加します。ほとんどの航空機の場合、フラップを 5 ~ 15°下げると、よりすばやく航空機を離陸させることができます。

フラップを 20°以上下げると、揚力よりも抗力の方が増加します。アプローチや着陸時には、フラップを 20°以上下げて設定します。

ピッチの調整

フラップを下げたり上げたりしたら、ピッチを調整する必要があります。たとえば、フラップを下げると、機首は上がる傾向があります。そこで、機首を水平に保つためにヨークを向こうに倒し、さらに操縦桿の操作を補助するためにトリム コントロールを使用します。 同様に、フラップを元に戻すと機首は下がる傾向があるので、操縦桿を手前に引き、機体が安定したらトリムを使用して操縦桿の操作を補助します。

フラップの種類

フラップには次のようないくつかの種類があります。

  • 単純フラップ : 単純なヒンジ (ちょうつがい) で主翼後縁に取り付けられており、 単純に下方へ動きます。 単純フラップは構造が簡単で安価なため、小型機によく利用されています。
  • スプリット フラップ : 主翼の後縁部の下面のみを下へ折り曲げるもので、上面はそのまま動きません。
  • 隙間フラップ : 単純フラップによく似ていますが、フラップと翼の間に隙間があり、翼の下面からフラップの上面に空気が流れるようになっています。この空気の流れにより、低い対気速度での揚力が大幅に増加します。
  • ファウラ フラップ : 最も複雑で効率的な構造になっています。フラップが後方へずれ、かつ下方に折り曲がることにより、翼面積と湾曲率が同時に増加します。大型ジェット機には、通常、ファウラ フラップが採用されています。

フラップの操作

フラップは抗力を増加させますが、スピード ブレーキとして使用するものではありません。 フラップを下げられるのは、航空機がフラップを下げられる最大速度 (対気速度計に白い円弧で示されます) 以下で飛行しているときだけです。それより速い速度のときに操作すると、フラップに構造的な損傷をもたらすことがあります。

一般に、離陸前には、航空機が滑走路からすばやく浮き上がるようにフラップを 5 ~ 10°下げます。ただし、各航空機のフライト マニュアルの推奨設定に従うことを忘れないでください。安全な高度と上昇速度に達したら、フラップを上げます。

着陸の準備段階で、フラップを段階的に下げます。目安としては、トラフィック パターンに入るか、またはアプローチを開始する際に、フラップを約 10°下げます。トラフィック パターンを飛行しながら、フラップを少しずつ下げていきます。たとえば、セスナ スカイホークでは、ダウンウィンド レグを飛行しているときはフラップを 10°に設定し、次にダウンウィンド レグからベース レグに旋回するときにフラップを 20°に設定します。ファイナル レグに旋回し、滑走路にアプローチする際に、必要に応じてさらにフラップを下げます。

軽飛行機では、フラップは座席間のレバーを使用して操作します。複雑な航空機では、コントロール装置のパネル上のボタンで操作することもあります。 キー操作でフラップを少しずつ下げるときは、F7 キーを押します。フラップを完全に下げるには、F8 キーを押します。フラップを少しずつ上げるには、F6 キーを押します。フラップを完全に上げるには、F5 キーを押します。

着陸装置

着陸装置とは、着陸や地上で走行する際に使用する、車輪、脚柱、その他の装備のことで、英語では “undercarriage” と呼ばれることもあります。 着陸装置の代表的な方式は、”尾輪式” と “三輪式” の 2 つです。尾輪式では、航空機の前部は 2 つの車輪で支えられ、尾部は、尾輪により支えられます。三輪式では、航空機は機首にある 1 つの車輪と、後方の 2 つの車輪によって地面に水平に着地します。尾輪式と三輪式はどちらも、主脚は航空機の重心に最も近い場所にあります。 ほとんどの主脚は 2 つ 1 組で構成され、機首の車輪や尾輪に比べ、より大きな着陸の衝撃に耐えられるように設計されています。

固定式着陸装置を上げ下げすることはできません。この着陸装置は操作不可能です。 しかし、格納式着陸装置を備えた航空機では、着陸装置を上げたり下げたりできます。この操作が必須の場合もあります。着陸装置の操作方法は機種ごとに異なります。着陸装置を上げ下げするには、Gキーを押します。

航空機情報

航空機情報」のフライト ノートには、Flight Simulator の各航空機の操縦に必要なあらゆる情報が掲載されています。各航空機の操作性、計器類の表示方法、レバーやスイッチの配置などを学ぶことができます。