航空図
チャートを使用して計画を立て、飛行中の針路を確認する
Flight Simulator で本物の航空図を使用する
Flight Simulator で飛行しているときに見える地形は、すべて実際の標高データからモデリングされ、デジタル化されたものです。航空図が手元にあれば、フライトの計画を立て、飛行経路をプロットし、推測航法を使用して飛行することができます。また、航空図の各種記号を読み取って、Flight Simulator ではどのように表現されているかを確認する練習にもなります。Flight Simulator のフライトで本物の航空図を使用すれば、航空図を読み取る技術だけでなく、航法に関する技能全般を高めることができるのです。
航空図の発展の歴史
ごく最近まで、飛行中のパイロットが最も頼りにしていたものは道路地図でした。そして、おそらくはこれ以外に頼るものはありませんでした。道路地図は、自動車を運転する人がどこに何があるかを知るにはよくできていますが、パイロットにとって重要な情報が記載されているとは限りません。快晴の日に高度 5,000 フィートまで上昇すると、実に 25,000 平方マイルもの景色を見通すことができます。このように広い視界でパイロットが意識する地上目標物は、地上を走るドライバーとはまったく異なり、安全に航行するための針路を確認できる目標物です。
1920 年代に入るまでは、公式の航空地図といえるものはほとんど存在しませんでした。代わりに、航空に関する各種刊行物に、飛行場に関する情報が記載されており、そのほかに飛行場へのアプローチ方法の概要や都市間の航空路などの飛行に関する指示が掲載されていました。このような刊行物や指示の情報は、基本的にはパイロットたちのメモを基に編集されていました。航空史の初期のころのパイロットは、湖、河川、道路、鉄道線路など、地上に見えるものだけを頼りに飛行していましたが、このような航法技術のことを地文航法といいます。
当時は何でもありの時代でしたので、パイロットは誰かの許可を得る必要もなく、ほとんどどこにでも自由に飛ぶことができました。飛行に関する規制というものはほとんどありませんでした。必要最低限の訓練を受けただけでパイロットは空を飛び、曲技飛行士は貧弱な木製羽布張りの飛行機で宙返りや急降下を見せていましたが、墜落事故も少なくありませんでした。1919 年の米国陸軍航空規則には、”飛行機が間違いなく飛べることを確認してから離陸すること”、”いつでもゴーグルを拭けるようにハンカチを数枚用意すること”、”高度計を信頼しないこと” といった助言が記載されていました。また、この時代のパイロットは、かろうじて飛行が可能な気象条件でも当たり前のように空を飛んでいました。しかし、航空術が発展すると共に、パイロットの技術も航法も高度になりました。空を飛ぶ航空機の数も増え、空港が各地に作られるようになりました。そして、詳細な航空図が必要とされるようになりました。
1926 年、米国連邦議会が可決した航空通商法により、初めて一連の航空規則が制定され、パイロットには操縦免許の所持が義務付けられるようになりました。さらに、商務省は 1926 年と 1927 年に、民間航空路地図の発行を開始しました。この計画により、330 マイル分の飛行情報が記載された航空図 “ストリップ マップ” が誕生しました。このストリップ マップの縮尺は 500,000 分の 1 (1 インチあたり約 8 マイル) で、現在使われている区分航空図と同じです。
航空図と飛行情報が整備されていった背景には、パイロット一人一人の貢献もありました。その 1 人であるエルリー ジェップセンは、航空図産業における最も有名な人物です。彼の操縦免許には、オービル ライトの署名がありました。ジェップセンは、操縦免許を取得するとすぐにカーチス JN-4 ジェニーを購入しました。しばらくは曲技飛行士として空を飛び、やがて飛行指導教官となり、後に航空測量に従事するようになりました。1930 年から 1931 年にかけての冬に、仲間のパイロットの多くが事故で死亡しましたが、このときジェップセンは、その原因は十分な飛行情報が公開されていないことにあると考えました。
ジェップセンは行動を起こしました。滑走路の長さや、照明やさまざまな障害物について、黒いノートに書き留めていったのです。空港の見取り図を描き、気象状況を報告してくれる農家の電話番号も記録しました。やがて、この飛行情報を他のパイロットたちも利用したがるようになり、その要求があまりに多かったので、ジェップセンはこの黒いノートの写しを 1 部 10 ドルで販売することにしました。今日でもジェップセンの名前は、優れた計器飛行用航空図、GPS NavData、フライト プラン用ソフトウェアの販売元として残っています。
米国政府が初めて発行した航空図は 3 色刷りで、飛行場、点在する航法援助施設、地形の特徴、目立つ地上目標物が記載されていました。今日では航空図も複雑なものとなり、建造物や地形の情報だけで 150 種類近くの記号が使われ、さらに航空情報を示す 100 種類の記号が使われています。モザイクのように隣接する制限空域と非制限空域が記され、管制空港と非管制空港のほかに、VOR ビーコン、ダム、航空路、コンパス ローズ、無線アンテナなど無数の情報が記載されています。かつてのパイロットたちが飛行中に頼りにしていた道路や鉄道線路も描かれています。米国の区分航空図は 6 か月ごとに改訂され、新たな版として発行されています。航空図の発展のようすを知ることは、世界がどう変わってきたか、そしてどれぐらい急速に変わってきたかを知ることにほかなりません。
航空図の種類
Flight Simulator で通常の VFR 飛行を行う場合に最も役立つのは、ジェップセン (Jeppesen) 社の SIMCharts と、以下の表に示す 500,000 分の 1 の航空図です。航空図の縮尺の数値が大きければ、より広い地域が掲載されていることになります。ただし、細部の情報は省略されます。VFR 用航空図の次に、計器飛行方式 (IFR) 飛行用の航空図の一覧を示します。
種類 | 用途 | 目的 | 入手先 |
SIMCharts | VFR/IFR | Flight Simulator での針路確認に利用できるように作られています (全世界) | ジェップセン社 |
区分航空図 | VFR | 地形、地上目標物、空港、無線、および危険情報が記載されています (500,000 分の 1) | パイロット向け製品販売店 (空港および Web) |
VFR 航空図 (VNC、視認可能な地上目標による航空図) | VFR (カナダ) | 地形、地上目標物、空港、無線、および危険情報が記載されています (500,000 分の 1) | パイロット向け製品販売店 |
国際航空図 (WAC) | VFR | 区分航空図と同じですが、縮尺は 1,000,000 分の 1 です (米国とカリブ海地方) | パイロット向け製品販売店 |
全世界航空図 (GNC、全世界を網羅する航空図) | VFR | WAC と同じですが、縮尺は 5,000,000 分の 1 です (全世界) | パイロット向け製品販売店 |
運航用航空図 (ONC、主として低~中高度の航空路が記載された航空図) | VFR | WAC と同じですが、全世界が対象です | パイロット向け製品販売店 |
ジェット機用航空図 (JNC、主としてジェット旅客機用の航空路が記載された航空図) | VFR | WAC と同じですが、縮尺は 5,000,000 分の 1 です (全世界) | パイロット向け製品販売店 |
戦術航法図 (TPC、主として軍用機の活動用に作られた航空図) | VFR | WAC と同じですが、縮尺は 5,000,000 分の 1 です (全世界) | パイロット向け製品販売店 |
ターミナル エリア チャート (TAC) | VFR | 記載されている情報は区分航空図に似ていますが、縮尺は 250,000 分の 1 で、米国のクラス B 空域が対象です | パイロット向け製品販売店 |
VFR ターミナル チャート (VTC) | VFR (カナダ) | 記載されている情報は区分航空図に似ていますが、縮尺は 250,000 分の 1 で、カナダの 5 つのターミナル空域が対象です | パイロット向け製品販売店 |
空港/施設の一覧 (Airport/Facility Directory) | VFR/IFR | 空港の詳細な情報 | パイロット向け製品販売店 |
低高度エンルート チャート | IFR | 航空路、空域境界、無線航法援助施設、計器進入可能な空港などが記載されています。高度 18,000 フィート MSL 以下で使用します | ジェップセン社 |
高高度エンルート チャート (ジェット) | IFR | 航空路、空域境界、無線航法援助施設、一部の空港などが記載されています。高度 18,000 フィート MSL 以上で使用します | ジェップセン社 |
計器進入方式 (instrument approach procedure) | IFR | 精密進入および非精密進入の具体的な手順です | ジェップセン社 |
DP (departure procedure、出発方式) | IFR | 一部の空港について、出発時に使用する特定の飛行経路に対する手順を記したものです | ジェップセン社 |
STAR (standard terminal arrival route、標準到着経路) | IFR | 一部の空港について、到着時に使用する特定の飛行経路に対する手順を記したものです | ジェップセン社 |
Aeroplanner.com | IFR | 施設、STAR、DP、アプローチ手順 | Web |