航空機の燃料補給と積載
重量とバランスを考慮して十分な燃料を積載する
燃料は、飛行前の計画の中で重要な位置を占めています。 目的地に到達できるだけの量が必要であるだけでなく、それ自体が航空機の積載重量に関係するからです。
航空機の重量とバランスに関心を持っているのは航空エンジニアだけだと考えているのなら、NTSB (National Transportation Safety Board: 国家運輸安全委員会) の事故報告書に目を通してみてください。不適切な積載または過重積載が原因で発生した事故に関する詳細を目にすることができます。航空機はすべて安全に運航するように設計されていますが、この安全性は、重心と重量が決められた範囲内に保たれていることを前提としています。
“ウェイト アンド バランス (重量とバランス)” という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。この場合の航空機の重量には、燃料、貨物、乗客、および何も積載されていない状態の航空機の重量 (自重) が含まれます。バランスの取れた状態とは、これらすべてを含めた重量が、重心の許容範囲内に収まるように配置されていることを意味します。
重量とバランスはパフォーマンスに非常に大きな影響を与えます。小型航空機の多くは、満席の状態で燃料を満載している状態では安全に飛行できません。
重量増加が航空機に与える影響を以下に示します。
- 離陸速度の上昇
- 離陸滑走距離の増大
- 上昇率と上昇角の減少
- 最大高度の低下
- 航続距離の減少
- 巡航速度の低下
- 運動性能の低下
- 失速速度の上昇
- 着陸速度の上昇
- 着陸滑走距離の増大
ヘリコプターについては、さらに以下の動作にも影響を及ぼします。
- ホバリング
- 離陸
- 上昇
- オートローテーション
- 着陸性能
積載物の位置も、航空機の飛行性能、特に失速やスピンの際の性能に影響します。許容範囲を超えた積載をせず、積載物を適切な位置に分散させることが大切です。積載物の分散は、重心 (CG: Center of Gravity) の位置に影響し、結果として航空機の安定性とコントロールに影響を及ぼします。
航空機の重量とバランスは、[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスで設定します。上の図はセスナ スカイホーク 172SP の場合です。ボーイング 747-400 のように複雑な構造の大型機では、さらに多くの燃料タンクとペイロード項目があり、項目ごとに自由に設定できます。
[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスを開くには
- メイン画面の [フリー フライト] をクリックします。
- [燃料とペイロード] をクリックします。
航空機の燃料補給
航空機に燃料を補給するには、2 つの方法があります。
手動で航空機に燃料を補給するには、空港の給油所へタキシングします。ただし、給油所がない空港もあります。 多くの空港には、以下のような給油所があります。
給油所で航空機に燃料を補給するには
- 給油所までタキシングし、燃料タンクがいっぱいになるまでそこに駐機します。
[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスを使用して、航空機に燃料を補給することもできます。このダイアログ ボックスの使い方の詳細については、後の「[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスについて」を参照してください。
重心について
専門用語でいう物体の重心 (CG) とは、物体の重量の平均位置のことを言います。飛行中の航空機は CG を中心に回転します。CG とは、航空機をつり下げた場合に、機体が前後左右に傾かずにバランスが取れるポイントのことで、重心が航空機に定められた許容範囲から外れると、操縦性に重大な悪影響を及ぼします。
人が歩行するときのことを考えてみましょう。私たち人間は体を動かす際、ある限られた範囲内で重心を移動させることでバランスを保っています。前進するには CG を少しだけ前に移動させますが、それは、立ち上がった状態で体を支えられる範囲までです。極端に重い物を持っていると、CG が失われて歩行が困難になり、転んでしまうこともあります。
航空機についても同じことが言えます。決められた範囲外に荷重がかかっても、航空機が回転する中心点はそれほど変わりません。 しかし、CG があまりにも前方へ移動しすぎると、着陸時に最低速度で飛行する際、エレベータを使っても正しい姿勢を維持できなくなる場合があります。また、あまりにも後方へ移動しすぎると安定性が失われ、大きく姿勢を変化させる飛行状態や失速、あるいは突風によるトラブルから体勢を立て直すのが難しくなります。 重量が増加すると失速速度が上昇することにも注意してください。フライトをより安全で快適なものにするには、規定範囲内に CG を保つ必要があります。
ヘリコプターについては、ほとんどの場合、CG の範囲が航空機よりも狭くなっています。3 インチより狭い範囲の場合もあります。
ほとんどの航空機に存在する機体運用マニュアルには、パイロットのために、重量とバランスの計算表が記載されています。Flight Simulator では、CG の許容範囲外に積載した航空機での飛行を、安全に体験することができます。
[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスについて
[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスに表示されている値を変更することはできません。これらの値は、[燃料の設定] ダイアログ ボックスと [ペイロード設定] ダイアログ ボックスの値を合計したものです。
自重 : 乗客、燃料、荷物、または貨物を含まない航空機の重量。
ペイロード : 乗客、手荷物、および貨物の重量。
燃料 : 積載されている燃料の重量または容量。
総重量 : 自重、燃料重量、ペイロードの合計。
最大総重量 : この重量または容量を超えて航空機に積載することはできません。
最大積載燃料 : この値を超えて航空機に燃料を積載することはできません。
大型航空機の場合、燃料と積載量の表示単位は、容量 (ガロンまたはリットル) ではなく重量 (ポンドまたはキロ) です。
燃料の量をポンド単位で表示するには
- [積載燃料を重量表示] チェック ボックスをオンにします。
[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスでは、燃料の重さがガロン単位で表示されます。[設定 – 一般] ダイアログ ボックスでメートル法を選択している場合は、リットル単位で表示されます。レシプロ エンジン用燃料よりもジェット用燃料の方が重いことに注意してください。
重心指示器
[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスには、航空機の重心 (CG) も表示されます。赤いかっこで示された範囲に CG を保つ必要があります。 重心指示器 (白と黒に塗り分けられた円) が現在の CG 位置を示しています。燃料または積載の設定を変更すると、重心指示器は移動します。
燃料の設定
燃料の搭載量を調整するには、[燃料とペイロード] ダイアログ ボックスの [燃料変更] をクリックします。タンク容量を超えて燃料を補給することはできません。また、航空機によっては、満席の状態で燃料を満載すると、航空機の最大総重量を超える場合があります。
複数の燃料タンクを備えた航空機では、それぞれのタンクが [タンク] 列に表示されます。バランスを考慮して燃料を補給し、航空機の CG を決められた範囲内に保つようにしましょう。これは、安全性だけでなく性能にも影響を及ぼします。一方の翼に片寄って燃料を積むと、効率のよい飛行ができなくなる可能性があります。
後退翼航空機 (Flight Simulator ではボーイング社製の航空機およびボンバルディア リアジェット 45) では、燃料の積載について特に注意が必要です。主翼外側のタンクの燃料は尾部方向に偏り、主翼内側のタンクの燃料は機首方向に偏る傾向があります。後退翼機の翼内タンクの燃料を使用する場合は、決められた範囲内に CG を維持するよう注意が必要です。
燃料の量は、全体に対する割合、容量、または重量を基準に調整できます。各タンクの容量は、[燃料の設定] ダイアログ ボックスの右側にある [最大積載量] 列に表示されます。表の下には、ガロンまたはポンド単位で現在の燃料の合計が示されます。
燃料の量をタンクごとに調整するには
- [燃料とペイロード] ダイアログ ボックスの [燃料変更] をクリックし、[燃料の設定] ダイアログ ボックスを開きます。
- [%]、[Gallons (ガロン)] (または [lbs (ポンド)]) の列で、量を変更するタンクのボックスをクリックします。
- 新しい値を入力します。
- [OK] をクリックします。
ペイロードの設定
ペイロードとは乗客、荷物、および貨物の重量のことです。[ペイロード設定] ダイアログ ボックスでは、項目ごとに値を入力できるようになっています。航空機内の重量を計測する位置を、専門用語で “ステーション” と呼びます。各ステーションは、航空機前部の基準点からそれぞれ特定の距離に位置しています。表の一番下には、すべてのペイロードの合計が表示されます。
ペイロードを調整するには
- [燃料とペイロード] ダイアログ ボックスの [ペイロード変更] をクリックし、[ペイロードの設定] ダイアログ ボックスを開きます。
- [lbs (ポンド)] 列で、変更する位置のボックスをクリックします。
- 新しい値を入力します。
- [OK] をクリックします。
